ラテン音楽に合わせて踊るサルサは、ラテンダンスのなかでも、ロマンチックで恋愛要素が濃いダンスといわれています。そして、サルサを踊る場所に行く人の間で「バチャータ」が流行しているようです。
バチャータは、ドミニカ共和国のスラングから生まれた言葉で、「ゴミ」が由来とされています。もともとドミニカ共和国の風俗で生まれたジャンルだったので、最近までは中流・上流階級の人々からは不評でした。
また、バチャータの音楽は、ギターをトレードマークにするほど中心的な役割を果たしています。1980年代では、アコースティックギターからエレクトリックギターに移行したので、現代のバチャータは50年前のオリジナルと比較すると大きく異なるようです。
音楽のテーマはラテンアメリカのギターメロディのように、失恋の悲しさを謡った話が多くあります。バチャータはアルゼンチンのタンゴと同様、男女の駆け引きを表現した音楽です。
バチャータは今まで、田舎から働きに出ていた使用人たちが1日の仕事が終わったあとに、深夜の裏路地で歌い踊るものでした。そこで、男性歌手が甘く寂しげな声で歌うメロディーに合わせて踊るので、大騒ぎする雰囲気にはなりません。
4拍子をベースに、4拍子目でアクセントを置く踊り方が一般的。ダンスは男女が引っ付きながら、左右に身体をくねらせるスタイルなので、密着度が高いダンスです。
日本人の国民性からすると、その距離感に慣れないことが多いでしょう。
ドミニカ共和国で人気のバチャータには、さまざまなスタイルが存在します。年代が経過するにつれて、バチャータも新たなスタイルに進化を遂げてきました。
バチャータの種類は、以下のとおりです。
それぞれ順番に紹介します。
バチャータの代表的なスタイルは、ドミニカンバチャータと呼ばれるダンスです。ドミニカ共和国発祥のバチャータで、1960年代にオリジナルが生まれたときに一緒に踊られていました。
バチャータのなかでは一番古いスタイルなので、すべてのバチャータダンスの基礎になります。このことから、トラディショナルバチャータ(伝統的なバチャータ)とも呼ばれるように。
ドミニカンバチャータは基本的にペアで踊り、シンプルなステップがほとんどです。ステップはギターのメロディに合わせて、4拍子目にアクセントを置きます。
ステップのポイントは、小さい正方形を描くような感覚です。横、横、前、タップ、横、横、後ろ、タップというようにステップを踏みます。
ドミニカンバチャータは、ステップと同時に腰の動きを合わせるダンスが特徴です。また、ドミニカンバチャータはカリブ海に浮かぶプエルトリコ・ジャマイカ・キューバ諸国でよく踊られています。
ドミニカ共和国では、モダーナと呼ばれているモダンバチャータは、西洋の伝統的な要素をベースに2005年に生み出されました。基礎は西洋の要素が濃いですが、サルサ・タンゴ・ボールルームの要素も追加されています。
モダンバチャータでは、男女が身体を大きく動かし、ヒップホップを誇張することがポイントです。モダンバチャータは、ドミニカンバチャータよりも現代に適応したダンスとなります。このスタイルをアーバンバチャータと呼ばれているようです。
バチャータはスペイン語の曲が多いですが、アーバンバチャータでは、英語の曲に合わせて踊ることも。ドミニカンバチャータでは、左右前後に動くことに対し、モダンバチャータは、自由な方向に動かします。
さらに、なめらかな動きが特徴で、基本的にゆっくりめのテンポに合わせて踊ることがコツです。モダンバチャータは、コンテンポラリーダンスから影響を受けているため、優雅な印象があります。
センシュアルバチャータは、サルサクラブに行くと頻繁に耳にするでしょう。しかし、サルサとは踊り方が異なります。
もし、サルサクラブに行く機会があれば、サルサとバチャータは踊れるようにするといいでしょう。最近では、バチャータ音楽だけのイベントもあるようです。
センシュアルバチャータは、フランス語で「パーティー」の意味を持つズークダンスに影響された独特なダンススタイルです。ほとんどの場合、円形の動きと、身体に波を打つように踊ります。
スペイン発祥のセンシュアルバチャータは、ダンスと演劇が混合されているスタイルです。基本的にリーダー役の男性が主導となり、フォロワーの女性が合わせて踊ります。
センシュアルバチャータは他のスタイルのなかで、最も身体の動きを重要視しているダンスです。なめらかに身体全体を使いながら踊り、ボディウェーブやアイソレーションも取り入れられています。
また、モダンバチャータをベースにしながらも、ターンの回数が少ないですが、社交ダンスのなかでも情熱的なスタイルともいわれているようです。
バチャタンゴは、西洋の伝統的な要素を取り入れたステップと、タンゴのステップが融合したダンスです。タンゴの特徴であるキックは、官能的でボールルームのダンススタイルを追加するために、ポップのリズムが使用されています。
バチャータで使用されているターンは、もともとは西洋の伝統的なダンスの要素でしたが、最近ではタンゴにも導入されているようです。バチャタンゴは、バチャータの発祥であるドミニカ共和国では流行していません。
バチャタンゴの由来は、バチャータとタンゴを掛け合わせたダンスです。キックやターンはタンゴの要素になります。
他のスタイルとは異なり、ステップよりも身体の動きを重視しているようです。カリブ海以外の国では、ダンス指導者の間で一時期流行しましたが、近年では見かけなくなりました。
バチャータは19世紀中頃に、ドミニカ共和国で誕生した音楽の「メレンゲ」から影響を受けています。メレンゲは、お菓子のメレンゲを作るときに、腰を振る動きに似ていることから名付けられたエピソードも。
メレンゲはその名のとおり、左右に腰を激しく降るダンスが特徴です。バチャータもドミニカ共和国の日常から生まれた音楽で、その国の社交ダンスとして踊られています。
バチャータは基本的に、3つのステップとタップ、ダブルステップなどさまざまなステップで構成されるダンスです。1990年代後半には、西洋のダンサーたちがバチャータに魅力を感じ、まったく新しいダンスを作り始めます。
サルサは、ソウルやジャズを取り入れながらアメリカ・ニューヨークに住むプエルトリコの移民たちの間で作曲されました。それに対しバチャータは、1960年代にボレロやメレンゲの影響を受けてドミニカ共和国で生まれています。
当時は、質素なパーティーを意味する単語として、認識されていたので、上流階級の人々はバチャータを聴くことも踊ることもしませんでした。また、バチャータの作曲者が十分な教養を持たない層であったことから、曲のテーマが愛や欲望、犯罪がメインだったそうです。
そして2000年代にはアメリカのアーティストたちによって、現代のバチャータの音楽が作られてきました。もともとは20世紀前半頃に発祥したラテンアメリカ音楽で、スペインの影響を受けていましたが、先住民やアフリカ音楽の要素も根強く残るため、ドミニカ共和国を代表する音楽ともいえます。
バチャータはドミニカ共和国で生まれたダンス音楽ですが、サルサはキューバもしくはプエルトリコで誕生したといわれています。サルサは1970年代のアメリカ・ニューヨークで流行してから、今でも人気が絶えません。
実際にサルサはバチャータよりも知名度が高いので、世界で一番知られているラテンダンスです。また、ジャズの影響を受けているため、バチャータとはまた違う曲調になります。
サルサは1960年代にアメリカ・ニューヨークのプエルトリコ系を中心につくられたペアダンスです。サルサでは男性が腰を使ったラテンダンスで、男女ペアで踊るダンスのなかではスピードが速いといわれています。
バチャータも男女ペアダンスですが、ほとんどの場合は男性が女性をリードするダンスです。サルサではアップビートの音楽と速いターンがある一方で、バチャータではサルサよりも遅いテンポで踊られます。
サルサは速いテンポで多くのターンがあるため、広いスペースで踊ることが多いようです。一方で、バチャータはその場で踊ることが多いため、狭いスペースでも完遂します。
もちろん、多くのスペースを使うバチャータも存在するので、サルサより狭い傾向があるということです。バチャータでは、パートナーと密着しながら踊ることがほとんどですが、離れていても問題はありません。
サルサとバチャータはどちらも4拍子の音楽に合わせて踊ります。サルサでは、トランペットやコンゴ、カウベルなど管楽器・打楽器が使用されるのに対して、バチャータではギターをメインに構成されている音楽です。
両者の違いは、曲調やダンスの内容が異なる点と、共通点は4拍子のリズムと男女ペアで踊るになります。
バチャータについて少しわかったら、実際に踊ってみましょう。こちらの動画では、トートーステップ・バッククロスステップ・ヒップタップ・プレパレーションターンといった足技について紹介しています。難易度は中級レベルですが、ゆっくり再生しながら真似すると、簡単に踊れるので安心してください。
全体的に、身体全体を使った動きが多く、腰を左右に揺らしていることがわかります。ちなみに、バチャータにおいて女性はヒール靴で踊ることが多いので、つまづかないように気を付けましょう。
基本ステップは、サルサが前後にステップを踏む・戻すを繰り返すことに対して、バチャータでは横移動が一般的です。8カウントを基本にする点はサルサと同様で、男性は左足を左横に出す時点からスタートします。
1・2・3のリズムで、左・右・左と交互にステップを踏み、4カウント目で右足をつま先で床にタップする流れです。そして、タップした右足を右横に出しながら、5・6・7のリズムで、右・左・右のステップを踏みます。
最後には、8カウントで左足のつま先を床にタップするといったステップが基礎です。女性が基礎ステップを右足から右方向に踏み出すことで、男性と鏡合わせの動きになります。
男性は、左足から左方向、女性は右足から右方向に横移動するステップが基本です。サルサの経験者の人であれば、バチャータの習得が早くなります。
こちらの動画を見て、バチャータの踊りの感覚を知りましょう。