「ボリウッドダンス」はインド映画で俳優たちが踊るパワフルなダンスとしても知られています。「ボリウッド」という名前は、もともとインドのムンバイが「ボンベイ」と呼ばれていたことが由来です。ボリウッドはインド版のハリウッドとして世界中でも人気を集めています。ボリウッドダンスはインドの代表的な宗教であるヒンドゥー教の文化に強く影響されたダンスのスタイルで、その名のとおりボリウッドから生まれたダンスです。最近ではYouTubeでもボリウッドダンスのシンクロ動画が日本でも人気です。
ボリウッドダンスは当初、インド映画が公開されていた中東やアジア諸国で人気がありましたが、2000年代に有名なアーティストが音楽やコンサートに取り入れたことがきっかけで今や世界中でも知られるようになりました。もともとボリウッドダンスは神話を表現するために作られたダンスで、ヒンドゥー教や仏教に由来する手振りを使っていることも特徴の1つです。また、ダンサーの顔の表情でストーリーを伝えることも重要視されています。
ボリウッドダンサーがまとうカラフルな衣装はダンスをより躍動的に見せる役割があり、ストーリーに大きな影響を与えています。ボリウッドダンスを一度見ると、強く印象が残りやすい理由も納得するでしょう。インドの文化が反映されているとはいえども、欧米のミュージカルとはまた異なる要素があります。ボリウッドでは特に演劇、音楽、ダンスの関係性がかなり密接に絡み合っているため、ボリウッドダンスは必要不可欠な芸術です。
ボリウッドダンスにはヒップホップ、アラビアンダンス、ジャズダンスなどの要素が含まれているため、ダンス経験者であれば身近に感じるかも知れません。さらにディスコミュージックや欧米のダンススタイルに感化されたことがボリウッドダンスの発展を遂げた大きな要因になります。伝統的なボリウッドダンスは農民たちが作物を育てるために必要な天候を与えてもらった神様に感謝するために踊ったことが起源です。現代ではアップビートでダイナミックなパフォーマンスがエンターテインメントとして、さまざまなアーティストたちが自分のダンスにも取り入れているほどです。
カラフルでダイナミックなボリウッドダンスですが、インド映画で踊られる理由について気になる方も多いでしょう。日本や欧米では見られないようなパフォーマンスをなぜ映画の中に取り入れているのか不思議に見えるかもしれません。頻繁にダンスシーンが出てきますが、決してミュージカルの要素があるというのではなく、インドの文化的な背景が存在しています。インドの文化では男女の恋愛を表現するシーンを避けるという風習があり、その代わりにダンスシーンを取り入れることもあるようです。
必ずしも避けなければならないことではありませんが、インドは多言語国家のため、言語以外でストーリーを表現する目的でダンスシーンをあえて使用しているのも理由の1つです。インドは宗教の力が強いため、新しい価値観を表現しようとすると国民からの反発もかなり多い国です。特に神話をねじ曲げるような表現や歴史を冒とくしているといった圧力が多いため、裁判に発展することが当たり前にあります。
しかし、ボリウッドダンスを見てダンスに興味を持つきっかけになったり、多文化のアイデンティティを認識することに貢献しています。インド人にとっては映画は娯楽のなかでも人気です。インド映画にはメッセージ性の強い作品も存在しますが、国民の多くが毎日厳しい生活を送っているため、重いテーマはうんざりすることもあります。また、ダンスシーンは1つの映画で30分は取り入れています。新しい映画が公開されるまでにダンスシーンを覚えた観客が映画館でどのように表現されているのかを楽しむこともあるようです。インドでは37個の言語が存在しているため、必ず言語の壁にぶつかります。映画のストーリーや主人公の感情表現を歌やダンスにすることでインド全土に伝えているということです。
インドの映画館では観客も一緒に踊るといったことが日常的にあります。どんちゃん騒ぎしながら楽しく映画を見るといった状況です。観客は席から離れて紙吹雪を投げたり、ボップコーンも弾けとぶような勢いでみんなで踊ります。日本の映画館ではめったに見られないような光景ですが、実は日本でも「マサラ上映」が注目されています。インドの映画館と同じようにみんなで踊って楽しく見るといった鑑賞スタイルです。
インドでは映画が公開されてから1週間ほどは家族連れで映画館には行けないほど。若者たちが騒ぐといった状況が続くため、後方の席に座っていると画面が見えないといったこともあります。しかし、作品の評判が良くなければ、すぐに上映が終了することも日常茶飯事のようです。
日本で人気バンドグループ・SEKAI NO OWARIが発表した「Habit」はYouTubeやTikTokで使用されている楽曲としても人気です。アップテンポのリズムに合わせて、メンバーやダンサーたちのコミカルな動きがクセになることでも話題を呼んでいます。キレのいいダンスやダイナミックなパフォーマンスを披露していることから、インド映画を想起させる独特な動きも含まれています。ボリウッドダンスの要素が取り入れていることから、日本でも徐々に馴染みのあるものへと発展しているようです。
実際にインド映画のボリウッドダンスを見てみましょう。ボリウッドダンスの特徴や踊られている理由を踏まえて見ると面白い発見があるかもしれません。
こちらはボリウッド映画「ロボット」のダンスシーンです。タイトルのとおり、主人公がヒーロー的なロボットのストーリーです。ダンスシーンでは主人公とロボットのダンサーたちが一緒に踊るといったボリウッドダンスの典型例ともいえます。しかし、ダンスのパフォーマンスはやはり素晴らしく、一体感のある動きとストーリーを伝える歌詞が特徴的です。
こちらは映画「アショク」のダンスシーンで、インドではかなり有名なダンスです。「Gola Gola(ゴラ・ゴラ)」の曲に合わせて男女に分かれて踊るシーンが印象的です。先に同性だけで踊って、最後にみんなで一緒に踊るといったわかりやすい構成なので、何度見ても飽きない人も多いようです。他のダンスでは見られないようなステップや技が逆に注目されやすいのでしょう。
本記事では、ボリウッドダンスの特徴からインド映画で踊られる理由まで紹介しました。最近ではYouTubeでボリウッドダンスと誰もが知っている曲とシンクロさせるパロディ動画が人気で、私たち日本人にとっても知る機会が増えています。また、日本のダンススクールでもボリウッドダンスを教えているところもあるので、少しでもダンスに興味を持つきっかけになればと思います。