カポエイラは、ブラジルで発祥した伝統芸でありながら、スポーツの1つとして知られています。かつて、ブラジルの奴隷たちが、音楽に合わせてダンスとしてカモフラージュしながら練習していました。みんなが集まったときに民族舞踊の練習と見せかけて、本格的にカポエイラの練習をしていたようです。現代でも、ダンスの1つとして人気のスポーツです。カポエイラでは、アクロバティックな技にアドリブを効かせながら音楽にのって戦います。普通の格闘技との違いは、音楽にのりながら戦う点です。対戦相手がお互いにアドリブで動きを当てはめて戦うため、決まった形がありません。
また、カポエイラは、ストリートダンスやバレエ、フィットネスで見られるようになりました。日本では、ストリートダンスで注目を浴びたのがきっかけで広まりました。最近では、女性の参加者が増えていることから、男性のイメージが薄まりつつあります。そもそも勝ち負けを決めるスポーツではないので、相手に攻撃したり、防御したりせずに、ほとんどの技をかわします。大人と子ども、男女が全力で楽しめるでしょう。カポエイラを通じて、信頼関係の構築や異文化との交流ができるため、参加者にとっては多様な世界が広がるでしょう。
カポエイラは、身体全身で回転する円運動がもっとも重要になります。円運動では、技から技につなぐため、攻撃以外にも防御としても取り入れられています。相手が円運動で攻撃するのに対して、受ける人間も円運動でか交わすシーンがよく見られます。円運動のなかでは、移動する際に場所取りゲームのように動き合います。お互いが円運動することで、歯車がかみ合うように組手が行われます。他にも直線的な攻撃もあるので、円運動だけではありません。
円運動に必要なスキルは、体幹の柔軟性です。ブラジルでカポエイラを行うときは「ジョーゴ」という言葉を使います。英語に変換すると「ゲーム」になります。格闘技のように相手を倒すのではなく、カポエイラは楽しむためのスポーツなので、お互いに尊重しながらベストな技を繰り出し合います。カポエイラが終わったあとは、握手で終わるのみです。ブラジルでは、ストリートチルドレンの更生のためにカポエイラが使われています。
カポエイラは、格闘技であり、ダンスの1つでもあります。かつてのブラジルでは、カポエイラに音楽が必要不可欠でした。奴隷だった彼らが監視から怪しまれないように音楽に合わせてダンスの練習をしていたものを今日まで引き継がれています。現代では、音楽のリズムもカポエイラに欠かせない要素の1つです。さらに、音楽の旋律や歌詞によってはスタイルが異なるため、カポエイラの技は多種多様です。常に音楽とともにあるので、他の格闘技とは一緒にできない最大の理由でしょう。もちろん、お互いに尊重しあう2人を応援する意味でも音楽は欠かせないものとなっています。観客の手拍子を必要とすることから、カポエイラの場にいる全員が参加者になります。
カポエイラには、2つのスタイルがあります。あまり聞きなれないと思いますが「アンゴーラ」と「ヘジョナウ」と呼ばれるスタイルです。カポエイラが発祥した地域や動きの特徴が異なりますが、一見みただけではわからないかもしれません。それぞれのスタイルについて詳しく紹介します。
アンゴーラとは、カポエイラの起源があったといわれているアフリカの「アンゴラ共和国」を指しています。他のスタイルと比べてゆっくりとしたテンポで動くため、厳かな儀式的な雰囲気が強く出ます。しかし、実際に戦う場合は相手の注意を引きつつ、隙をついて一気に接近して相手を倒す攻撃が特徴です。また、だましあったり、ふざけあったりする要素があるため、攻撃型のスタイルともいえます。アンゴーラでは、手を地面につけて技を披露することが多いため、逆立ちで頭を低い位置に置くシーンをよく見られます。一般的に靴を履いて行い、格闘技のように帯はありません。また、他のスタイルとは違い、手拍子がないため、楽器の数が多く見られます。ちなみにアンゴーラの創始者は、アンゴラ共和国に本格的なカポエイラの道場を開いたことで知られています。
一方で「ヘジョナウ」は、アンゴーラと比べて素早い動きとアクロバティックな技が特徴です。基本的に裸足で参加し、段階を示す帯があるため、アンゴーラとは逆のルールです。さらに楽器は少数なので、観客に手拍子を求めます。「ヘジョナウ」の創始者は、格闘技のチャンピオンだったこともあり、格闘技寄りのスタイルになります。他にも空手やテコンドーを取り入れた技もありますが、後の後継者たちによって取り入れられたようです。
昔のカポエイラは、現代と比べるとシンプルな技が多く、格闘技の経験がない人でも始められるスポーツでした。しかし、かつてはカポエイラに対するイメージが良くなかったため、解禁されるまでは悪い印象を与えていました。1930年代に創始者がカポエイラの練習システムを構築したことから、他の格闘技と同様に道場で練習ができるようにした実績があります。現在では、アンゴーラとヘジョナウを融合させて自由なルールを持つ「コンテンポラーニア」というスタイルが世界中に広まっています。
カポエイラでは、基本的に勝敗をつけないため、お互いのベストを尽くし合い、終わったあとは握手で終わるのが決まりです。表現の良し悪しは、その場にいる人が思うだけで十分です。相手を足を蹴り倒すことで決着をつける場合もありますが、相手を打ち倒すというものではありません。他の格闘技のように優劣をつけない決まりには、疑問に感じる人もいるかもしれませんが、誰もが平等に参加できることがポイントです。
カポエイラには、試合がないため、「ホーダ」と呼ばれる集会が定期的に開かれます。「ホーダ」は「円」という意味を持ち、「ホーダ」が行われる場所には必ず床に大きな円が描かれています。円には参加者が囲み、中心には楽器演奏隊が配置されます。「ホーダ」では、お祭りのように手拍子を打ち、楽器演奏に合わせて歌が始まります。世界的に認められた交流の場として、2014年にはユネスコ人類無形文化資産に登録されました。
現代のカポエイラは、今や世界中の人に知れ渡り、スポーツやダンスで取り入れられるようになっています。格闘技界では、カポエイラの技を使った格闘家がいたり、ダンス界では、ストリートダンスやバレエに取り入れた実績があります。教育の現場でも、障害を持つ人に合わせたカポエイラが使われており、下半身不随の人や耳が不自由な人が活躍しています。最近では、日本のフィットネスクラブでもカポエイラの習得が可能になりました。
今までに、メディアでもカポエイラを見たことがある人が多いかもしれません。ゲームや漫画、アニメ、映画で登場する機会が増えたことで、身近なものとして多くの人に知られています。カポエイラの基本的な部分を押さえれば、自分の個性を自由に表現できるようになります。一般的なスポーツよりも自由度が高く、得意な技や楽器演奏で目立つため、参加するハードルは低いでしょう。失敗しても退場にはならずに戦い続けられるので、競争が好きではない人におすすめのスポーツです。
こちらは日本で行われたカポエイラの様子です。戦う2人を楽器演奏隊と参加者が囲み、手拍子を送りながら戦いの様子を見ています。相手を傷つけることなく、お互いを尊重し合いながら技を披露していることがわかります。選手交代を繰り返しながら、楽しそうにお互いに技を見せあっています。楽器のテンポが速くなると、技のスピードも速くなり、場が盛り上がっています。通常の格闘技であれば、真剣に相手を倒すという意志を持って挑むので、厳格な雰囲気になりますが、カポエイラのように楽しむ雰囲気が好きな人におすすめです。
本記事では、ブラジルで発祥したカポエイラについて紹介しました。カポエイラは、もともとスポーツとダンスを融合させたものでしたが、格闘技のような厳格なルールのないものとして親しまれています。日本のフィットネスクラブでもエクササイズの1つとして取り入れられているため、身近な存在となっています。もしカポエイラに興味を持った人は、この機会に始めてみるといいでしょう。他のダンスやスポーツでも活かせる技があるので、自分の得意なことと組み合わせてみましょう。