コンテンポラリーダンスとは?意味不明なダンスといわれている理由も

コンテンポラリーダンスとは?

コンテンポラリーダンスとは、振り付けや表現方法に決まりがないダンスです。ブレイクダンスやバレエなど特徴を持つダンスではなく、形にとらわれずに、自由に身体表現できることで注目されています。一言でいえば、基準を持たない何でもありのダンスです。

すでに存在するヒップホップダンスやジャズダンス、ミュージカルなどは観客にわかりやすくストーリーや感動を与えるダンスですが、コンテンポラリーダンスは抽象的でわかりにくいといわれています。しかし、自由で多種多様に、時代と共に変化していくので、先が予想できないところも魅力の1つです。

コンテンポラリーダンスは、ヨーロッパが発祥といわれており、西洋の要素はもちろん、アフリカンダンスや日本舞踊の要素も含まれる場合があるので、多種多様なダンスともいえます。また、時代の最先端を体現するダンスとも呼ばれ、その時代を先駆けるダンス作品やダンステクニックを指す言葉です。

それぞれの時代に登場する新しいダンスをコンテンポラリーダンスとされていたので、具体例でいうと、1960年代に流行したストリートダンスや、シルクドソレイユの現代サーカスも同様に指していました。そもそも、コンテンポラリーには「現代的な」の意味が含まれているため、定義が難しく、どのダンスにも必ずしも当てはまるわけではありません。

そういった事情から、コンテンポラリーダンスと聞いて、ダンス自体だけでなく、言葉も意味不明と呼ばれる理由になるのでしょう。誰かが、コンテンポラリーダンスと名乗れば、その通りに認知されてしまうのが現状です。

最近では、伝統のあるバレエや演劇でも、コンテンポラリーダンスを取り入れており、従来のルールを解体するような作品を作り上げています。今までの常識が壊れて、革命的なダンスになるかもしれません。

コンテンポラリーダンスの歴史

コンテンポラリーダンスの起源は、1960年代のモダン・ダンスに対する新しいダンス活動から始まりました。徐々に、テクニックやスタイルによるダンスが派生したことから、後のヌーヴェルダンスからコンテンポラリーダンスになります。フランス語の「ダンス・コンテンポランヌ」が語源です。

1970年代のフランスでは、デサントラリザシオンと呼ばれる文化の地方化が進められ、芸術分野に大規模な予算が組まれました。身体分野においては、コンテンポラリーダンスが生まれるきっかけとなった、現代舞踊団や現代バレエ団が設置。

設置された現代バレエ団では、従来のバレエに新たな要素を追加したり、反バレエ的なダンスが踊られるように。コンテンポラリーダンスは、フランスから、ヨーロッパ全体、アジア、中東の順番に広まりました。それぞれの国の文化を取り入れながら、革命的なダンスとして発展していきました。

コンテンポラリーダンスは、もともとヌーヴェルダンスとも呼ばれ、フランス語で「新舞踊」の意味を持ちます。1980年代のフランスで流行し、ドイツのダンスシアター、アメリカのポストモダン・ダンス、日本舞踊などコンテンポラリーダンスの要素を取り入れたダンスです。表現の幅が広がり、身体表現の限界を超える振り付けも次々と生まれました。

ヌーヴェルダンスは、伝統的なクラシックバレエから脱却するための試みとして、時代の先駆的なダンスとして発展しました。1990年代には、新しい表現技法を求めるダンサーが増加したことから、舞台の音響や照明、美術、ITを複合的に導入する事例も。また、ストリートダンスや日本舞踏などの要素を取り入れ始め、ヌーヴェルダンスからコンテンポラリーダンスに名称が変更されます。

コンテンポラリーダンスが意味不明といわれている理由

コンテンポラリーダンスは、自由に身体表現をするダンスであることから、特徴や形式がないことから、「抽象的で何を表現しているのかわからない」といった意見も少なくはありません。コンテンポラリーダンスは、見て理解するより、「感じる芸術作品」という意見もあります。

コンテンポラリーダンスが意味不明といわれている理由も、従来のダンスにはストーリー性やわかりやすい表現したものが多いため、一般的なダンスとは逆であることから、よくわからないといわれることも。数多くのダンスのなかでも、コンテンポラリーダンスの振り付けには不気味に感じる動きがあり、日常生活では見ない人間離れした表現を取り入れています。

また、複数人で絡み合ったり、道具を用いて踊ることもコンテンポラリーダンスならではの表現です。実際の舞台では、身体よりも大きい布で踊ったり、紙を破く動きも見られます。

他のダンスにはない、ダンサーの独特な世界観を感じられる魅力があるので、意味がわからなくても、観客が感じることでコンテンポラリーダンスが成立するという見方もできますね。

世界の地域別で異なるコンテンポラリーダンス

コンテンポラリーダンスは、フランスから世界中に広まり、国の文化によって独特の表現も生まれています。コンテンポラリーダンスには、基準が存在しないため、受け取り方も様々です。

しかし、現状は時代の最先端と呼ばれるコンテンポラリーダンスよりも、従来の娯楽を求める舞台芸術ばかりがマスメディアで取り上げられています。コンテンポラリーダンスを認知している人が少なければ、もちろんポジションも低いままです。

そういった現状を改善するために、コンテンポラリーダンスの支援に力を入れている国も増えています。

次に、以下の世界の地域別で異なるコンテンポラリーダンスを解説します。

  • ヨーロッパ
  • ラテンアメリカ
  • イスラエル
  • 日本
  • オーストラリア

ヨーロッパ

ヨーロッパのコンテンポラリーダンスの特徴として、集団的芸術と実験的芸術の方向性に分かれます。

前者の集団的芸術とは、公立劇場やバレエ団などを母体として、従来のダンスと躍動感のあるダンスで観客を魅了させることを目的としています。上演場所も伝統的な劇場施設で発表されることがメインです。オランダ、イギリス、ギリシャ、またポーランド、エストニア、ブルガリアの東欧で盛んに上演されている傾向があります。それぞれの国の文化が影響しているのかもしれません。 

一方で、後者の実験的芸術とは、ファッションやビデオなどの様々なメディアで、観客とユーモアさを共有する目的があります。特に訓練されたダンサーを必要とせずに、個人作家による作品なので、少人数の作品がメインです。また、場所を選ばずに上演することが特徴で、小規模な劇場や野外でも発表されています。主に、フランス・ポルトガル・オーストリア・ドイツ・ベルギーの西欧に該当します。

ラテンアメリカ

ラテンアメリカに属するブラジルでは、サンバがよく知られています。ヨーロッパのモノトーンな雰囲気とは逆に、カラフルで華やかなダンスの1つです。

もともとは、ブラジルのアフリカ系住民が独特なリズムに合わせて集団で踊るダンスでした。当時は、奴隷だった彼らの祖国であるアフリカの伝統音楽バトゥーキが由来です。

バトゥーキとは、アフリカの島国カーボ・ヴェルデが起源で、音楽に合わせて踊る習慣がありました。現在でも、19世紀以降のバトゥーキの音楽が残っており、社交ダンスとしても広まっています。第二次世界大戦後は、アメリカの音楽の影響で、白人向けのサンバとして生まれたボサノバが人気です。

サンバは、打楽器による演奏に合わせて、身体を揺すりながら、前後に激しくステップを踏む動きが特徴です。ブラジルの歴史的背景と文化を融合させて作り上げた、コンテンポラリーダンスともいえます。

イスラエル

中東のイスラエルでは、日本ではあまり知られていませんが、コンテンポラリーダンスが盛んになっています。イスラエルのダンスの中心地であるバットシェバでは、世界中からダンサーや演出家が集まり、各々の表現力を魅せ合うことが交流の1つです。

しかし、イランにおいては、宗教的な事情でダンス自体が認められていないので、中東全体では盛んとはいえません。日本人俳優の森山未來さんがイスラエルとの文化交流使として派遣されたことで、コンテンポラリーダンスの知名度が一気に上がりました。

イスラエルのダンスは、独自の文化とヨーロッパの影響を組み合わせて、独特なダンスを生み出しています。 具体例でいうと、イスラエルを代表する「バットシェバ舞踊団」では、GAGA(ガガ)と呼ばれるコンテンポラリーダンスが人気です。

ガガは、ダンス未経験の人でも、自分の身体を通して感覚や想像力を高める新しい表現方法として注目されています。 普段、意識していない部分を覚醒させることで、身体の可能性を広める効果が期待できるダンスです。

日本

日本において、コンテンポラリーダンスは、従来のダンスのカテゴリーに入らないものと認識されています。ヨーロッパや南米とは異なり、コンテンポラリーダンスを知る人が少ないことが要因です。

今までとは違う、まったく新しいダンスをコンテンポラリーダンスとして認知されているので、未開拓の領域であることが現状かもしれません。日本の教育機関では学ぶ機会がないことも課題の1つです。

日本のコンテンポラリーダンスは、日本舞踊が代表的で、実際にフランスのヌーヴェルダンスに影響を与えています。当時よりも、時代が激変しているので、従来のコンテンポラリーダンスは新しく変容していくでしょう。

オーストラリア

オーストラリアのコンテンポラリーダンスは、近代的なダンスで、多文化やニューテクノロジーの可能性をテーマを深く追求しています。具体的にいうと、環境の悪化や障害の問題、メディア操作、人種差別など現実的なテーマがメインです。

現在では、従来のヒップホップダンスやブレイクダンスなどの動きを取り入れながら、舞台にテクノロジーを導入することで、バーチャル空間を作り上げることを可能にしています。まさに、最先端の技術とダンスを融合させた表現方法です。

オーストラリアならではの皮肉がコンテンポラリーダンスとして表現するユーモアさは、私たちに新しい価値観を見せてもらえます。他の国のコンテンポラリーダンスと比較してみると面白いかもしれませんね。

コンテンポラリーダンスの代表作

現代の日本における、以下のコンテンポラリーダンスの代表作を紹介します。

  • Sia 「アライヴ feat. 土屋太鳳 / Alive feat. Tao Tsuchiya」
  • 米津玄師 「Loser」
  • 森山未來「CeBIT」
  • 欅坂48「不協和音」

いずれも、日本では知名度が高い芸能人なので、身近に感じられるかもしれません。

Sia 「アライヴ feat. 土屋太鳳 / Alive feat. Tao Tsuchiya」

今でこそ人気沸騰の女優、土屋太鳳さんはダンスが得意なことでも知られています。こちらの動画では、オーストラリアの歌手Sia(シーア)の「アライヴ」に合わせて、土屋太鳳さんがコンテンポラリーダンスを踊っています。彼女の演技力と身体能力が発揮されており、日本でも話題になりました。

米津玄師 「Loser」

若年世代に人気の男性アーティスト米津玄師さんの「Loser」では、コンテンポラリーダンスが踊られています。米津玄師さんの独特な雰囲気がジャンル分け不可能ともいえるコンテンポラリーダンス。思わず彼の音楽の世界観に引き込まれてしまいます。

森山未來「CeBIT」

今年の東京2020オリンピックでも注目を浴びた森山未來さん。こちらの動画では、「CeBIT」の曲に合わせて予想がつかないコンテンポラリーダンスを披露しています。幼少期から色んなダンスを経験されたこともあり、彼の表現力に圧倒されるでしょう。

欅坂48「不協和音」

圧倒的な人気を誇るアイドルグループの欅坂48。こちらの「不協和音」でもコンテンポラリーダンスが取り入れられています。タイトルの通り、不協和音を表現したダンスが特徴で、センターの平手友梨奈さんだけが違う振り付けしていることが特徴です。

まとめ

最先端のダンスとも呼ばれるコンテンポラリーダンスについて紹介してきましたが、世界に共通する定義はなく、それぞれの国の文化や音楽の影響によって、新たに定義づけされるダンスともいえます。だからこそ、基準がない何でもありのダンスとして現在でも変化し続けており、一見、抽象的で意味不明な表現のように見えても、深いテーマが隠されていることを知っておくと、視点が変わるでしょう。

コンテンポラリーダンスの面白さは、現実的なテーマや歴史的背景を感じ取ることにあります。ダンスについて知識や経験がなくても、感じる能力は誰にでも備わっているので、「感じる」ことがコンテンポラリーダンスを成立させる要素の1つです。

日本でも有名な芸能人がコンテンポラリーダンスを踊っているので、この機会に好きな曲のテーマを深堀りしてみてもいいでしょう。

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