ダンサーにおすすめのミュージカル・映画【10選】ダンスの歴史も

ダンスを学ぶならミュージカル・映画がおすすめの理由

ダンスの表現を磨くためにいろんな技術作品に触れたいと考えているダンサーもいるでしょう。ダンスを学ぶならミュージカルや映画がおすすめです。

おすすめである理由は2つあります。

まず、ミュージカルは、音楽、歌、台詞およびダンスを組み合わせた舞台演劇のことをいい、視覚的なパフォーマンス以外にも、ストーリーの中で起こる感情の変化を楽しめます。ストーリーの世界観の中で、表現するダンスパフォーマンスを学ぶ機会になり、現役のダンサーの人なら自分のダンスに取り入れたい要素を発見できるヒントにも。

また、今回紹介する映画はダンス・ミュージカルの要素を取り入れた作品です。特に1950~1980年代においてはミュージカル映画の最盛期ともいわれ、当時のアメリカ社会を反映させた作品が数多く残されています。

同時に、黒人差別や貧困、麻薬、暴力が根強く残ったブラックカルチャー(黒人文化)においては、やり場のない感情をダンスという手段を用いて表現していました。それが後に現代のストリートダンスやヒップホップダンスなど馴染みのあるダンスに発展することに。

そういった歴史的背景を同時に学べるミュージカルやダンス映画は、鑑賞を楽しみながら学べるメリットがあるので、ぜひおすすめしたいです。

ダンスの歴史・起源は?

ダンスの起源は、文明が生まれる前の古代エジプトから踊られており、ベリーダンスの起源ともいわれています。その証拠が、2人の女性がダンスする姿が描かれた壁画です。

今回は、20世紀のアメリカから発展したダンスの歴史を中心に紹介していきます。

まず、黒人音楽(ブラックミュージック)と黒人文化(ブラックカルチャー)なしではストリートダンスを語れないくらい深い関わりがあります。20世紀初頭に植民地の奴隷としてアフリカから大陸を渡ってきた黒人は、白人至上主義を理由に長い間、差別と貧困の中で暮らしていました。

彼らに生まれ持ったリズム感と身体能力に長けた才能を活かしてスポーツや音楽、ダンスを通じて存在をアピールしますが、当時は差別を受けたり、見せ物にされることも。

その後、政治的に激動の時代を経て、1970年以降はブラックカルチャーが切り開かれていきます。

様々な人種が入り混じるアメリカでは、やがて若者たちの間でHIPHOP(ヒップホップ)が流行。アフロアメリカン・ヒスパニック系・カリビアンアメリカンが集まるブロックパーティから発信するダンスが由来です。

HOP(ホップ)は、「跳ぶ」「飛躍する」という意味がありますが、「黒人の創造性文化」の音楽以外のファッションやアートの発展を願い、HIPHOPと名付けられました。

そして、路上に段ボールなどを敷いてつくられた小さなダンススペースで、黒人ダンサーたちはストリートダンスやブレイクダンスを踊り始めます。

彼らは暴力やドラッグ組織への関与に反対し、自由・正義・愛などを唱え、物理的な抗争ではなく、ブレイクダンスやラップで優劣争うことを広めました。


ダンスを学ぶなら必見!おすすめのミュージカル・映画【10選】


ダンサーとして活動している人に、ぜひ観てほしいミュージカルと映画があります。作品の中には当時の時代背景や歴史が詰まっており、劇中に登場する俳優のダンスパフォーマンスにも注目すると、未知の世界観に触れることも可能です。

作品のストーリーや歴史的背景を学ぶメリットは、ダンサーとして必要なセンスや多様な芸術作品に触れることで、表現力を向上させるヒントになります。また、作品の中のダンスパフォーマンスや魅せ方を学べることも。

今回は以下のミュージカルと映画を紹介します。

  1. ウエスト・サイド・ストーリー
  2. ヘアスプレー
  3. マンマミーア
  4. メンフィス
  5. フラッシュダンス
  6. 雨に唄えば
  7. ラ・ラ・ランド
  8. ハイスクール・ミュージカル
  9. ダンス・レボリューション ザ・ニュースタイル
  10. グレイテスト・ショーマン

それぞれの作品はジャンルが多様ですが、すべてアメリカを舞台にした作品です。多様な人種の間で起こった歴史を忠実に反映した作品が多いため、当時のアメリカ社会を中心に紹介していきます。

1.ウエスト・サイド・ストーリー

ウエストサイド物語の舞台は1950年代後半、ニューヨーク。移民や低所得者たちの町・ウエストサイドでは、貧困と差別の中、若者たちが縄張り争いに明け暮れる日々。自分たちの境遇と、自分たちを追い込んだアメリカ社会へ強い反発を感じながらも、若者たちは抑えようのない苛立ちを、非行や暴力という形でぶつける他ありませんでした。

ポーランド系アメリカ人の少年非行グループ、ジェット団と、プエルトリコ系アメリカ人の少年非行グループ、シャーク団は、縄張りを巡って物語が始まります。それぞれのグループに属するトニーとマリアが許されざる恋愛模様を描いた、現代版『ロミオとジュリエット』です。

今回、紹介する「Cool」は言葉のとおり冷静を意味し、ライバルのシャーク団に対して待ち興奮するジェット団のメンバーを落ち着かせるために、メンバーのリフが歌いかけます。メンバーの頭を冷やすようになだめるような歌詞が特徴です。

彼らのダンスパフォーマンスにも注目すると、男性の力強さと若気のあるダンスに圧倒されます。興奮していたメンバーが徐々に落ち着きを取り戻し、シャーク団との決闘に団結を固めていく様子がわかります。

ミュージカルと人種問題を組み込んだ名作なので、ダンサーの人は必見の映画です。

2.ヘアスプレー

ヘアスプレーの舞台は1962年、黒人差別の風潮が色濃く残るアメリカ・ボルチモア。主人公のトレイシーは、ダンスとおしゃれが大好きなビッグサイズの女の子。

夢は10代に人気テレビ番組『コーニー・コリンズ・ショー』に出演して憧れの人気ダンサー、リンクと踊るという、体形など気にしない天真爛漫ぶりです。ある日、母親の反対を押し切ってテレビ番組のオーディションに参加するが、美人でスリムなライバル母娘が仕掛けた罠からトラブルに巻き込まれます。

60年代ならではのソウルダンスは、観る側にも元気をもらえるようなパフォーマンスです。また、白人社会に黒人文化が入ってきた当時の背景が描かれており、タブー視されていた白人と黒人の恋愛模様にも注目したいところ。

今回、紹介する「You Can't Stop The Beat」は映画のラストシーンです。

歌詞の中にある”Shimmy(シミー)”というのは肩を前後に動かす踊りを指します。曲中では上半身を激しく動かす振り付けが多いのも特徴

トレイシー役のニッキー・ブロンスキーの明るいパフォーマンスは、観る側にも元気を与えてもらえます。

3.マンマミーア

舞台はギリシャ・エーゲ海の架空の島にあるホテル。ホテルのオーナーであるドナと娘のソフィーは、親子二人で仲良く暮らしていました。結婚式を控えるソフィーは、ヴァージンロードを父親と歩きたいと願い、あるきっかけで自分の父親候補3人をこっそり招待したことから物語が進んでいきます。

全米で大ヒットしたABBAの名曲を用いたミュージカルです。もともとブロードウェイで舞台公演していたことで世界中で知られており、2008年に映画化しました。今や世界的に有名な女優メリル・ストリープが歌って踊る映画は貴重です。

今回、紹介するのは誰もが耳にしたことがある「Dancing Queen」では、予想外の展開に落ち込むドナを励ますために、「昔に戻りなさい」とロージーとターニャが歌い出し、ドナも加わります。歌いながら部屋の外へと出ていき、島中の女性たちを引き連れて歌い踊るシーンが印象的です。

こちらの曲では全身を大きく使うダンスで、楽器を表現した振り付けも特徴。振り付けと歌詞が連動しており、複雑な振り付けがないので比較的覚えやすいダンスともいえます。

4.メンフィス

舞台は1950年代のアメリカ・テネシー州メンフィス。人種差別が根強く残っていた時代に、実在した白人のDJ デューイー・フィリップスを題材として作られたミュージカルです。音楽を通じてアメリカ南部の人種差別に風穴を開けた、実在するラジオDJの半生を描いた作品。

ロックンロールのパイオニアとして、エルビス・プレスリーが出したシングルを最も早くラジオで流した人物としても有名です。メンフィスで演奏される音楽やダンスは、観客の心も熱くなる魂の叫びを感じたい人におすすめです。

また、白人歌手が黒人歌手の歌をカバーし始め、黒い音楽であるブルースやジャズやリズム&ブルースと、白い音楽であるカントリー&ウエスタンが融合したロックンロールが生まれた時代でもあります。

主人公の白人ヒューイは、レイス・ミュージック(黒人音楽)に対する思いが熱い男。ある日、ラジオ局で白人が聴くDJ番組を見学したヒューイは、DJがブースを離れたすきにブースに入り込み、黒人音楽をオンエアしてしまうが、白人の若者からのリクエストが殺到したことがきっかけで彼の人生が変わり始めます。

ラジオのダイアルを回してもすぐに見つかる局は白人が聴く番組ばかりだったところに突如現れたレイス・ミュージック(黒人音楽)。若者たちは熱狂、そして時代が変わり始めます。

こちらの「Radio」では、主人公ヒューイがある日突然、白いラジオに黒い音楽を流したことを機に売れっ子DJになるまでの過程を歌い、音楽の力で人種差別が根強い文化に黒い音楽の素晴らしさが広がるように人々の心に訴えかける歌詞が印象的です。

ロックンロールの曲調に合わせた白人と黒人の若者たちのダンスパフォーマンスも見逃せません。

5.フラッシュダンス

舞台は1980年代のアメリカ。女性の性別による格差をなくす社会運動のフェミニズムを象徴する時代。そして日本でジャズダンスブームを巻き起こした1980年代を代表する作品でもあります。

昼は製鉄所、夜はナイトクラブのダンサーとして働きながら、プロのダンサーになる夢を追うアレックスの姿を描いた青春ドラマです。ROCK STEADY CREWのダンスシーンが話題にもなった、ダンス映画の先駆け作品でもあります。

主人公のアレックスは何度も挫折しかけますが、自分を信じて挑戦する姿は観る人に一歩踏み出す勇気がもらえる作品です。アメリカのダンス業界やオーディションがリアルに描かれているので、ダンサーの人は参考になるかもしれません。

こちらの「What A Feeling」はフラッシュダンスのラストシーンです。主人公のアレックスがダンスオーディションに挑み、情熱があふれるダンスパフォーマンスが話題になりました。

アレックスが街で見かけた少年達のブレイクダンスや交通整理の警官の動きなどが、ラストのオーディションでのダンスに取り入れられています。特に肩や背中で回転するウィンドミルは一番の見せ場。

身体を支える腕の筋力、腰を高く上げるための腹筋、回転する時の背筋を鍛えなければ成し遂げられない技も披露されています。

6.雨に唄えば

雨に唄えばの紹介:1952年アメリカ映画。原題「Singin’ in the Rain」監督は主演も務めたジーン・ケリー。トーキー映画黎明期の舞台裏の人間模様を「雨に唄えば」をはじめとするヒット曲にのせてコメディタッチで描く。ジーン・ケリー演じる主人公が土砂降りの雨の中で主題歌を歌い喜びを表現するシーンは、映画史に残る名場面として語り継がれている。

映画がサイレントからトーキーに移行しはじめたハリウッド。人気スターのドンとリナはいくつかの作品で共演し、話題づくりのため恋愛関係にあると世間に見せ掛けていた。そんなある日ドンは、可憐なキャシーと出会って恋に落ちる。

ジーン・ケリーが土砂降りの中で恋する喜びを表現しながら歌う「雨に唄えば」(Singin' in the Rain)は映画史に語り継がれる名シーン。恋をする喜びを見事なクオリティーの歌とダンスで表現する。物語後半の14分にも及ぶミュージカルシーンも圧巻。プロフェッショナルでアーティスティック。

主人公ドンを演じるジーン・ケリーが、雨の中で傘を使ったタップダンスで恋する喜びを表現しているシーンにも注目したいところ。

7.ラ・ラ・ランド

舞台は現代のロサンゼルス。現代の有名なミュージカル映画の1つです。ちなみに「ラ・ラ・ランド」は「現実離れしている状態」を意味するロサンゼルスの愛称のことをいいます。

物語は朝の高速道路が大渋滞によるドライバーたちのイラつきでクラクションを鳴らすところから始まります。映画スタジオのカフェで働くミアは女優を目指していましたが、何度オーディションを受けても落ちてばかり。

ある日、ミアはある男性ピアニストの演奏に魅せられ、お互いに叶えたい夢を追いかけながら恋愛模様が描かれています。

こちらの「Another Day of Sun」は有名なオープニングシーン。車を使ったダンスシーンが特徴で、約100人のダンサーが一斉に踊り始めます。

渋滞でイラついていたドライバーたちが徐々に楽しい感情に変化していくところも見どころです。

8.ハイスクール・ミュージカル

舞台アメリカの高校。バスケ部の人気者トロイと、優等生で真面目な転校生ガブリエラが主人公。2人は周りの反対を押し切り、ミュージカルのオーデションに向けて奮闘する青春ミュージカル映画です。アメリカの高校らしい陽気さと10代の感情のぶつかり合いがリアルに描かれています。

大晦日のパーティで、カラオケでデュエットすることになった初対面同士のトロイとガブリエラは歌う喜びを実感。その後トロイの通う高校に、デュエットしたガブリエラが転校してきたことがきっかけで2人の高校生活が始まります。

お互い歌う喜びが忘れられず、学校で行われるミュージカルのオーデションを受けることを決心。邪魔をされながらもオーディションの合格を目指して奮闘する姿が描かれています。

こちらは映画のラストシーンでキャスト全員で踊る「We're All In This Together」。まるでお祭りのようなシーンですが、キャストのダンスパフォーマンスにも注目したいところ。

会場の盛り上がりが満載のラストでは、メインキャストを引き立てるパフォーマンスと一体感によって最高の喜びを表現する場面が特徴です。

9.ダンス・レボリューション ザ・ニュースタイル

舞台は南アフリカ共和国。昼も夜も働きながらプロのヒップ・ホップ・ダンサーを目指す一人の女性が、掴みかけた夢と現実の狭間で葛藤し、本当の自分を見出していく姿を描いた青春を描いた「ダンスレボリューション」の最新作。原題では「Honey 3」となります。

ヒップホップダンス好きにはたまらない作品で、ダンスに情熱を持つ若者たちのダンスバトルが繰り広げられます。ヒップホップ音楽「Runaway(U&I)」で披露するロミオとジュリエットが印象的です。

ダンサーのメレアは、恋人のエリック一緒に、母親を追悼するために「ロミオとジュリエット」のコンテンポラリー・ヒップホップ・ダンスを上演しようとしていたが、名門校での上演の夢は、授業料未払いのために追い出されてしまいます。

自分の才能を生かし、周囲の人々に刺激を与える方法を模索していた彼女は、落ち目の劇場を借りてダンスショーを開催するも困難にぶつかりながら、自分の夢を実現するために奮闘。

ヒップホップダンスが満載のこちらの作品で、自分のダンスに取り入れたい要素の参考になるでしょう。

10.グレイテスト・ショーマン

グレイテスト・ショーマンは、19世紀に実在した興行師、P・T・バーナムの半生を描いたミュージカル映画です。ミュージカル映画の中では、最も人気のある作品の1つでもあります。

主人公のバーナムは貧民層の少年。上流階級にいる想い人を手に入れる為に必死で仕事を探し、反対されながらも駆け落ちで結婚してから家族と幸せに暮らしていました。しかし、勤務先の会社の倒産をきっかけに、バーナムは「フリークス(異形な身体を持った人間)」たちを集め、”バーナム博物館”と称しショービジネスを始めます。後にサーカス団として活躍。

こちらの「This Is Me」では、ひげを生やした女性レティが力強く歌い、様々な事情を抱えたフリークスたちが自らのコンプレックスを個性に変えて、「これが私だ!」と自信満々に披露するシーンが特徴です。

サーカス団との出会いによって自信を持ったフリークスたちが堂々と歌う姿に圧巻されるパフォーマンスは、勇気をもらえるシーンの1つ。感情そのものをダンスに表現するところにも注目したいポイント。

まとめ

今回は、ダンスの歴史とおすすめのミュージカルと映画を紹介してきましたが、その中でもネガティブな時代背景がなければ現代の自由が生まれることはなかったでしょう。また、ダンスの歴史においてヒップホップやストリートダンスは人種間を超えた世界共通のコミュニケーションツールの1つでもあります。

忠実に当時のアメリカ社会を映し出すミュージカルや映画では、歴史だけでなく、新しいダンスが生まれる経緯まで観ることが可能です。また、現代の作品でも充分にパフォーマンスの参考になる要素が詰まっているので、この機会にぜひいろんな作品に触れてみましょう。

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