【JYDF2022 Organizer】Nathan Clark 特別ロングインタビューを公開!

Japan Youth Dance Festival 2022 Organizerが、今年もNathan Clarkに決定!

自身も3歳からイギリスでダンスを始め、スイス、オランダ、ベルギーにてパフォーマンスを重ね、16歳でダンスの指導資格を取得したというNathanに、今年のJYDFの魅力、エントリーに際するアドバイス、そして気になるNathanのバックグラウンドにも迫りました。



ー 自己紹介と、Nathanさんの経歴について教えてください!


Nathan Clark (ネイサン クラーク)です。イギリスのロンドン郊外のギルフォードという町の出身です。ロンドンから40分ぐらいの所ですね。

ダンスは3歳から始めました。家族にダンス経験者はいなかったのですが、小さい頃からテレビで歌っている人を見ると踊りだすような子どもだったので3歳から通える近所の社交ダンス教室に親が通わせてくれたんです。イギリスでは当時、社交ダンスのテレビ番組がとても流行っていたので、社交ダンス教室はとても人気で、習っている子どももたくさんいました。

その後、社交ダンスの先生に「本気でダンスをしたいなら、全ての基礎となるバレエを習った方がいい」とアドバイスされ、バレエやタップやジャズを習える違うダンス教室に通い始めました。

中学校の進学先を決める頃には、週6日のダンストレーニング、週末はダンス大会…と完全にダンス中心の生活をしていました。自分にはダンスしかない!と感じていたので、普通の中学ではなく、ダンス専門学校に進学したいと思っていました。実はイギリスでは、ダンスをやっている男の子が周りにダンス仲間がおらず、疎外感を感じてしまうケースは少なくないんです。だから皆、バレエ仲間が確実にいるバレエスクールに進学するんです。でも僕の場合は、周りの友達が皆すごく僕のダンスを応援してくれていて、いつも「ネイサンはすごい!」と絶賛してもらっていたので、皆の期待に応えよう!という想いが強くありましたね。

そして9歳の時に、世界一のバレエ学校と言われるRoyal Ballet Schoolに入るためのプレ・スクールに通うことになりました。そこで2年間色々な事を経験し、「バレエだけに絞るのはもったいない」と、結局Royal Ballet Schoolには進まずに、演劇や歌も学べるSylvia Young Theatre Schoolという舞台芸術専門学校に進学することに決めました。

この舞台芸術専門学校に入学すると、自動的に芸能事務所に所属するため7年間の間、映画『ハリー・ポッター』に出演したり、某コーヒー会社のPRのためのヨーロッパツアーに参加したり…。海外向けの英語の教科書のCDに出演する仕事は一番よくやりましたね!


ー 未だにダンス、特にバレエをしている男の子は疎外感を感じやすいという実情がイギリスに残っているのが驚きです。その実情は日本でも当てはまると思いますか?


日本もイギリスも「男の子=スポーツ」という概念が少なからずあります。もともとバレエにおいては、男の子ダンサーの数が少ないので、やっぱり寂しいんですよ。いじめを受けていなくても、女の子の数が圧倒的に多いので、考え方の違いなどでぶつかっても負けてしまうし、そこで心が折れて辞めてしまう男の子もいます。だから僕は、指導者として男の子に教えるとき「僕が責任もって守ってあげるから、その代わり絶対上手になりなさい」と厳しく言っているんです。男の子のバレエダンサーは母体数が少ない分、活躍できるチャンスもいっぱいあるから、たくさん練習するんだよ!と伝えています。



ー 日本に初めて来たのはいつですか?そのきっかけは?


2014年です。きっかけは、専門学校を卒業するタイミングで、背中をケガしてしまったんです。1年間、ケガのリハビリが続き、踊ることも出来なかったので、ダンス教師としてアルバイトを始めました。ケガは無事治りましたが、このままダンスを本気で続ければ、この先もっと大きなケガをするかもしれない。そうすると一生ダンスが踊れなくなる…それなら、大学に入って弁護士になるための勉強をしようと思ったんです。子どもの頃からダンサーになれないなら弁護士になろうと決めていたので。

そして、大学の法学部入学後、アジア各国に留学できるプログラムを見つけ、一番僕の中で未知数だった日本に交換留学することを決めました。そして名古屋大学に留学し、1年間日本語と日本の法律を学び、友達もたくさん出来て、日本が大好きになりました。



ー 日本に住むことになった経緯は?


留学の1年間という期間は長くもあるんですが、日本でやり残した事がたくさんあったので、イギリスに帰国後、大学を卒業してから「もう1年間だけ日本に行こう!」と決めて、英語教師として1年限定で日本に滞在することにしたんです。

そして日本に戻ってきて、英語教師をしつつ新たにアルバイトを探していた時に、Japan Youth Dance Festival(略:JYDF)の主催団体であるYTJ(Youth Theatre Japan)のダンス講師募集を見つけました。「英語でダンスを教えられる外国人ダンス講師募集」というものでした。イギリスで弁護士になろう、日本滞在は1年だけって決めていたのに、やっぱりダンスに対する想いは強く残っていたので、その募集にすごく惹かれたんですよね。好きなダンスに関わりながら安定した収入を得るということはイギリスでは難しかったので、日本でやってみよう!と心に決めました。そして、面接に合格してYTJに入社し、日本滞在4年目の今に至ります。



ー YTJに入社しダンス講師として働くにあたり、何かイギリスとの違いなどは感じましたか?


イギリスとは全然違いました。レッスンが始まる前と終わった時にきちんと挨拶することや、また言葉の壁もありました。日本語では伝わりにくいニュアンスがあったり、ダンスの専門用語を日本語で覚えるのは大変でしたね!とにかくレッスンの数をこなして、色んなスタッフの真似をしながら慣れていきました。


ー その後JYDFのスタッフになられたという事ですが、日本のダンスコンテストとイギリスのダンスコンテストの違いも感じましたか?


基本的にはイギリスも日本も一緒なんですが、イギリスのダンスコンテストは、観客がすごくうるさいんですよ(笑)客席から名前を叫んで応援したりするんですが、舞台上でそれを聞くと、すごくモチベーションが上がるんです。日本では観客が皆静かに座って観ているので、是非コロナの心配が無くなったら、JYDFでも観客皆に大声で応援して欲しいですね!



ー 昨年度のJYDFもプロジェクトマネージャーとして主催されていましたが、JYDFとはどんな大会なのか、教えてください。


はい。JYDFとは、ジャンル不問のダンス大会で、「ダンスを通して何かを社会に表現したい」という想いを持っている人たちが出演する大会です。自分の体を使って何かを表現したいという人たちが集まる、色んな人が色んな目線で見ることが出来る大会でもあります。審査員もあらゆるジャンルの方々に来ていただくので、いつも審査結果がどうなるか分からず、僕自身毎年ワクワクしています。



ー JYDFが「自由に表現する場」であるのと同時に「順位を決める大会」でもあることの意義はなんですか?


「ただの発表会」ではなく、順位を決めることで、参加者は「点数をつけられるという危機感」を持ち、また「上に行きたい」というモチベーションを持つようになります。また、個人的にはイギリスの色んな舞台やコンテストに出てトップクラスのダンサーを見てきたので、日本でも日本トップのダンサーを見つけたい!そして、トップクラスの人達と子ども達を舞台で競わせたい!という強い想いがあります。


ー 昨年度はどんな大会になりましたか?


昨年度は、僕が見てきた4回のJYDFの中で最高の仕上がりになりました。さらに1年前の2020年度のJYDFは、コロナ禍でオンライン大会になってしまったので、オフラインで出来たこと、また緊急事態宣言下で全国大会が延期になったにも関わらず、すごくレベルの高い参加者がたくさん出てくれて、素晴らしい大会になり、嬉しかったです。過去3回のJYDFでは予選の段階で「おそらくこの人/チームが優勝するだろうな」と予測できたんですが、昨年度に関しては、全く予測が出来ないぐらい、全体としてレベルが高かったと思います。



ー 年々、参加者のレベルは上がっていますか?


はい。「前年度のレベルを超えないと全国大会で優勝できない」ということは、参加者みんな分かっているので、自然とレベルは上がっていきます。上手な人が集まれば集まるほど、「上手い」ことが「当たり前」になります。「上手いだけではダメだ」と分かった参加者は、さらにもう1ランク上の何かを突き詰めていきます。そうすると次は「1ランク上のレベル」が「当たり前」になっていくんですよね。このようにして、どんどん上を目指すべく、皆が努力するので、年々、大会としての成長、そして参加者の成長を感じることが出来るんです。


ー 今年のJYDFのテーマは「切り拓け、新時代!」ですが、どのような想いがこめられていますか?


このテーマに決めた理由は、2つあります。

1つめは、コロナの影響で、ダンス界含む世界のエンターテイメント業界が大きく変わり、新しい時代に入ったからという理由です。オンラインで世界中のダンスを見られるし、レッスンだって受けることが出来る。エンターテイメントの楽しみ方や提供の仕方が変化しました。

2つめは、今の若者たちの力で、次の時代を作っていって欲しいという想いからです。「どんな時代を作りたいか?」に対する思いをダンスを通じて表現して欲しいのです。

例えばハッピーな時代にしたいなら、観客を笑顔に出来るようなハッピーなダンスをしたりして、社会に若者の想いを伝えていって欲しいのです。今は世界中が過渡期を迎えています。新しい世代にダイレクトに影響を与えるのは、今の若者たちだと知って欲しいですね。

また、このコロナ禍で大人も子どもも本当に大変で辛い思いをしたと思います。でも、絶対に良いこともあったと思うんです。世界中のオンラインテクノロジーが進化し、僕自身2年間イギリスには帰れていませんが、ZoomやSkypeなどのおかげで家族との繋がりを失うことなく、孤独も感じていません。コロナがあったけど、色々学んで成長できたよね!と皆に思ってもらえるようなポジティブな大会にしたいですね。



ー コロナ禍での開催において、エントリーに不安を感じている人もいると思いますが。


はい。不安に感じることは当然で、不安に感じる人も、感じない人も、どちらも間違いじゃないと思います。大会運営側としては、しっかりとしたガイドラインのもとで開催するので、ガイドラインや対策を読んで頂き、その上で是非エントリーを決めて貰えたら嬉しいです。ただ、1つ言えることは「今しかない」ということです。この先コロナがどうなっていくかは分からないけれど、今、何かに挑戦したいという気持ちがあるなら、挑戦した方が良いです。こんな時期だからこそ、ダンスを見てくれる人皆に元気や感動を与えることが、パフォーマーとしての責任だと思います。


ー 今年のJYDFも、様々な分野における著名な審査員の方が参加されるんですか?


はい。現時点で既に公表済みなのは、タップ・ブレイクダンス・ヒップホップの審査員の方々です。予選や本選では劇団四季やテーマパーク、バレエダンサーの方々も審査に入っていただきます。色んな事を経験してきた審査員が集まるのもJYDFの魅力の1つです。

ブレイクダンサーがバレエを審査するの?と思うかもしれませんが、バレエの細かいテクニックは分からなくても、ダンサーとしての舞台上での存在感や、基礎、観客への影響力などは正確に審査できます。バレエダンサーでもブレイクダンサーの審査員を感動させられたら、それは凄い事ですよね。


ー 今年のJYDFで、昨年度から変わった点を教えてください。


昨年度はソロ部門は英語の曲のみだったのですが、今年は楽曲が自由になったりと、あらゆるルールがより自由になっています。

また、今年はJYDFのテレビ番組が放送される予定です!今まさにテレビ局と一緒にどんな番組にしていくか、擦り合わせをしているところです。テレビでJYDFについて放送することで、たまたま番組を観た超有名な振付師の人が「この出場者いいね!」と思ってくれる可能性も大いにあります。そこから仕事に繋がるかもしれないので、これは昨年度との大きな違いですね。


ー エントリーを前に、スランプに陥っている人や自信を失くしている人に何かアドバイスはありますか?


「何故ダンスを始めたのか?」を思い出して欲しい。そして「ダンスをやっていて一番嬉しかった思い出」を思い出し、またその時の感情を取り戻したいなら是非続けて欲しい。

そして、人間は誰でもスランプに陥ったり、落ち込む時期があるということを理解して欲しい。きっとどのプロダンサーに聞いても「ダンスをやめようと思った時期」というのはあると思います。人間なら誰でも経験するような辛い時期に入ったというだけで、ダンスや挑戦することを諦めてしまうのはもったいないですよね。僕も社交ダンスをやっている時、何年も結果が出ずにとても苦しんだ時期があるんです。それで1ヶ月間レッスンを休んだこともありました。すると、もっと辛くなったんですよね。それから先生や周りの人からたくさんサポートを受け、「大会に出なくても、楽しむ目的でまた始めたらいいよ!」と言ってもらえたので、再開し、結局また1ヶ月後には大会に出場していましたね(笑) だから、一回ダンスから離れてみるというのも、乗り越える1つの手かもしれません。でも何よりもまずは「何故ダンスをしたかったのか」を思い出してみることが大切だと思います。



ー JYDFに参加した人に、どんなことを感じ、どんなことを学んで欲しいですか?


自分自身の素晴らしさです。そして自らの特徴を分かってほしい。ダンスの素晴らしさを再確認すると同時に、自分の影響力や出来ることを知ってほしいですね。また、周りの人のダンスを見て「私ももっと出来るはず!」というモチベーションに繋げてもらいたいです。

昨年度のJYDFの後、優勝者の方からメールで御礼を言われたんです。「エントリー前はスランプ状態だったけど、JYDFを通してやっぱりダンスがやりたいと思えた」というメッセージを貰い、改めて「JYDFを通して、この人の人生が変わったんだ」と実感しました。ダンスの素晴らしさ、自分の素晴らしさ、そして観客の方々にもダンスを含む芸術の素晴らしさを感じてもらえたらと思います。



ー JYDFはダンス界にどのような影響を与えると思いますか?


ダンス大会はたくさん開催されていますが、ジャンルや基準が絞られている大会がほとんどです。JYDFはジャンル不問で自由に自分らしく表現できるダンス大会なので、「ジャンルを絞らなくても自分らしいダンスを表現することの良さとその可能性」をダンス界に伝えられると思います。

あとは単純にダンス界を盛り上げられたらと望んでいます!



ー エントリーを迷っている人に一言エールを送るとしたら?


難しく考えず、まずはエントリーしてください(笑)そして、練習を頑張ってください。人を感動させられるようなダンスを見せられるよう、努力してください。迷うぐらいなら、やった方がいいと思います!

きっと皆さん、「出場する限りは優勝を目指さないと」と思うかもしれませんが、たとえ優勝できる自信がなくても、挑戦することに意味があると思います。1位になるためには、そこに行きつくまでに、色んな事を経験しないといけません。予選で落ちてしまったとしても、そこから学んだことや成長を活かしてまたチャレンジすれば、次は最終予選までいけるかもしれない。必ずしも誰もが最初からトップになれることはありません。まずは出来ることから始めて、いっぱい経験を積んでみてください!


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