足だけで踊るアイリッシュダンスとは?リバーダンスとの違いも

足だけで踊る理由

アイリッシュダンスは、アイルランド発祥のダンスで、上半身の無駄な動きを無くし、足のステップだけですべてを表現しています。

床に対して、常に垂直で踊り、大地と対話しながらリズムを出すことに特化したダンスです。

アイルランドの民族衣装をまとい、足だけで踊るので、日本人にはあまり馴染みがないかもしれません。

しかし、誰もが観たことがある大ヒット映画にも登場していることから、意外と身近に感じるダンスでもあります。

ところで、アイリッシュダンスが上半身不動で踊る理由についてご存知でしょうか?

芸術的、宗教的、歴史的な3つの理由にあります。それぞれ順番に紹介していきます。

芸術的な理由

足技に集中しながら、上半身を直立不動にすることで、床を踏みながら音を出すテクニックを視覚的、聴覚的に楽しむためだといわれています。

必ずしもすべてのアイリッシュダンスが直立不動というわけではなく、今ではペアスタイルや上半身を自由に動かすスタイルも存在するので、強制ではありません。

現代では、アイリッシュダンスから派生したリバーダンスと呼ばれるエンターテインメント性の強い舞台作品があります。こちらのリバーダンスでは、アイルランドの歴史をストーリーにしていますが、完全に足技だけで演出しています。アイルランドの歴史を少し知っていれば、より楽しめる舞台作品です。

宗教的な理由

アイリッシュダンスが盛んに踊られていた当時は、両手を自由に使って踊ることが、公序良俗に反すると教会から規制があったようです。

日本舞踊やバレエの表現にもあるように、腕から指にかけての動きには、情緒、官能、性的な表現の要素が含まれているためだといわれています。

女性のダンサーが多い印象のアイリッシュダンスですが、男性が踊ることも当たり前なので、特に宗教的な縛りが存在しなかったことも、大きな特徴です。

イギリスの支配下による要因と宗教的な理由が重なって、上半身不動になったことも納得がいきます。

歴史的な理由

イギリスの支配期間が長く苦しんでいたアイルランド人が、イギリス人に対して、武器不所持であることを証明するために「両手を挙げよ」というイギリス側の欲求に対する反抗として、意図的に両手を両脇につけていたといわれています。

その後は、アイルランドの伝統的文化活動が禁じられるようになり、次々と起こるアイルランド人の反乱をイギリスが弾圧。

こういった厳しい統制は約400年間も続いていましたが、アイルランド人は家のなかで隠れて音楽の旋律を歌い継がれ、暖炉の前で足を踏み鳴らしながら親から子へ伝えられるようになりました。

現代の上半身を動かさずに踊るスタイルは、イングランド兵の窓の外からの監視の目を逃れるためだったともいわれています。

自由な表現を制限されてしまったアイルランドであっても、国民の文化を守るためにこっそりと引き継がれていたことは、イギリスへの小さな反抗だとしても、歴史の深さがわかります。

映画「タイタニック」でも登場

世界で大ヒットした映画「タイタニック」のワンシーンで、3等客室にきたヒロインと主人公の2人がアイリッシュダンスを踊っています。

これをきっかけに、アイリッシュダンスの存在を知った人も多いはず。このシーンでは、足のステップがメインに、自由なスタイルで踊っています。

2人が披露するステップもかなり細かいことがわかりませんか?

特にダンス経験がない人でも、練習すれば踊れるようになります。遠い国の伝統的なダンスを知っているだけでも、希少価値が高い存在になれるでしょう。

軽快な民族音楽のメロディーが好きな人にはおすすめです。アイリッシュダンスの知識を入れてから、こちらの映画も観ると面白いと思います。

タップダンスとの共通点

床に足を踏み鳴らすという点は、タップダンスにもいえますが、両者には違いが存在します。

イギリスの支配下にあったスペインのフラメンコにも似ているような感じはありますよね。

アイリッシュダンスと他のダンスとの違いは、踊り方、音楽、靴が異なります。

まず、踊り方ですが、タップダンスにおいて基本的に縛りがありません。バレエやジャズダンスのように華麗に踊ったり、ストリートダンスと組み合わせて格好良く踊ったりと、比較的自由です。

対してアイリッシュダンスは、上半身を動かさずに足のステップでリズムを生み出します。その理由は先ほども述べたように、イギリスの支配下においてアイルランド文化を禁止したからです。

また、音楽についてですが、アイリッシュダンスではケルト音楽と呼ばれる民族音楽を使われることが多く、西ヨーロッパのケルト人によって受け継がれた伝統的な音楽です。

ケルト音楽でしか使わない楽器もあるので、アイルランドを象徴する音楽ともいえます。聞くだけで、中世ヨーロッパのイメージができると思います。

そして靴は、タップシューズとも似ている点はありますが、つま先とヒールが硬いことが特徴です。

対してタップシューズの場合は、靴底のつま先とかかと部分に金具がついています。

見た目は同じように見えても、構造は異なるのでアイリッシュダンスを学びたい人は注意して選びましょう。

日本におけるアイリッシュダンス

日本でアイリッシュダンスを知られた要因は、やはり映画「タイタニック」です。楽しそうに踊る場面を見て、思わず踊りたくなる人もいるでしょう。

日本でも、アイリッシュダンスの公演が行われたり、学ぶ人もいます。特に、東京にアイリッシュダンス教室が集中しているため、機会があれば体験してみるといいでしょう。

逆に、世界でアイリッシュダンサーとして活躍する日本人もいます。閉鎖的な印象を持たれがちですが、外国人である私たちでも本当にアイリッシュダンスが好きなら、アイリッシュダンサーになれるということを証明しています。

リバーダンスとの違い

アイリッシュダンスとセットで「リバーダンス」という言葉も聞いたことがあると思いますが、実はアイルランド音楽をメインとした舞台作品のことを指しています。

リバーダンスでは、アイリッシュダンスのなかで体幹や腕を使わずに足のステップだけで踊る「アイリッシュ・ステップダンス」と呼ばれる舞踊を元に作られています。

リバーダンスの元をたどれば、アイルランドに伝わる神話や伝承や、アイルランド人の主食とされていたジャガイモが疫病により、飢餓をもたらしたことで、仕方なくアメリカへの移住の歴史と深い関係にあります。

そもそもリバーダンスは、簡単にいえば、アイルランドの歴史をストーリーとした舞台作品なので、ミュージカルのようなイメージです。

リバーダンスは、ダンスのジャンルとして思われがちですが、エンターテインメントの要素が含まれた舞台作品として確立されています。

アイルランドの首都ダブリンでも人気の公演で、大人数のダンサーたちによるパフォーマンスに圧倒されてしまいます。

アイリッシュダンスだけでは物足りないという人にも、リバーダンスを観ると満足すると思います。

リバーダンスは、DVD化されているので、この機会に観てみましょう。

アイリッシュダンスとリバーダンスを比較してみよう!

ここまでアイリッシュダンスとリバーダンスの違いについて紹介してきましたが、具体的なイメージを持って頂くために実際の動画を紹介します。

2つのダンスの違いを知ったうえで、改めて観ると面白いと思います。

これからアイリッシュダンスを学んでみたいという人も、ぜひ参考にしてみてください。

アイリッシュダンス

こちらのアイリッシュダンスでは、大人数でフォーメンションを作りながら踊っています。

また、アイリッシュダンスの特徴は音楽が生演奏であることが多く、ライブ感覚で観ることができます。

こちらの動画では、オーケストラを前に緑の衣装を着たダンサーたちが華麗なダンスを披露しています。

上半身の動きをよく見ると、ほとんど動いていないことが分かります。これが本来のアイリッシュダンスです。

足を上げたり、飛んだりするシンプルな動きが多く、ストリートダンスのようなアクロバティック技はありません。

ただし、本格的に競技用としてのダンスの場合は、つま先立ちでジャンプを多用する初心者向けのライトダンスと、つま先を鳴らしながら踊る上級者用のヘヴィダンスに分かれます。

アイルランドでは、子どものダンサーも多いため、ダンス初心者の人でもハードルが低いダンスです。

アイリッシュダンスには、おもにソロダンスとグループダンスがありますが、ソロダンスでは手は使いません。一方で、グループダンスでは、腕を使いながらフォーメンションを綺麗に保っています。

フリースタイルで踊るシャンノースと呼ばれるステップダンスの原形がありますが、つま先を鳴らしながら、手は自然に踊るため、適当な印象があると思います。

しかし、実際にやってみると難しいので、どのダンスも本物を知ったうえで踊ることがポイントです。

リバーダンス

アイリッシュダンスから派生した舞台作品、リバーダンスも動画で紹介します。

伝統的な民族舞踊で堅い印象のあるアイリッシュダンスとは、対照的にリバーダンスはストーリー性のあるダンスです。

エンターテインメント性の有無による違いがわかりやすいと思います。先述したとおり、アイルランドで起きた出来事や伝承などを組み合わせた物語で、主人公と周りのダンサーとの違いがわかりやすく構成されています。

音楽はもちろん、足のステップのリズムで感情表現をしているので、奥が深いダンスです。

アイリッシュダンスと同様に、上半身は動かさないことが基本で、ダンサーの表情も無表情です。

ミュージカルを観慣れている人からすると、違和感があるかもしれませんが、これもリバーダンスの特徴といえます。

つまり、完全に足のリズムだけで表現していることから、ステップダンスに特化しています。

まとめ

本記事では、アイリッシュダンスとリバーダンスについて紹介しましたが、明確な違いがわかったでしょうか?

あまり馴染みのないアイルランドの民族舞踊ですが、ヨーロッパの深い歴史と関わりがあるダンスです。西洋の文化に興味がある人にとっては、面白いと感じたかもしれません。

アイリッシュダンスは、日本でも映画や公演、動画を通じて知ったという人が増えているので、知っておくだけでも、知識の幅が広がると思います。

アイルランドと何かしら繋がりのある人は、アイリッシュダンスのことを少しでも知っていると、会話の幅が広がるといったメリットもあります。

世界中で大ヒットした映画「タイタニック」も、この機会に観返してみると面白い発見があるかもしれません。

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