クランピングはどんなダンス?歴史の始まりから種類・踊り方を解説!

クランピングとは?

クランピングはアメリカ・ロサンゼルスで犯罪発生率が最も高いサウスセントラルが発祥のストリートダンスの1つです。別名で「クラウニング」「クラウン・ダンシング」とも呼ばれています。

正式名称は「Kingdom Radically Uplifted Mighty Praise」で、その頭文字を取って「KRUMP(クランプ)」です。

「KRUMP」の語源は以下のようになります。

  • Kingdom(神の国)
  • Radically(素晴らしい)
  • Uplifting(精神的高揚)
  • Mighty(偉大)
  • Praise(神への賞賛)

発祥地であるサウスセントラルは街中で頻繁に発生する抗争や暴力の代わりに、ダンスで解消しようと試みた運動から生まれたダンスなので、歴史的背景にはクリスチャンの要素も絡んでいます。

そういった過酷な状況の中で生きる若者たちが、ドラッグやギャングなどの犯罪に手を染めることから遠ざけるための手段です。また、クランピングのダンサーは道化師をモチーフとしたフェイスペインティングを施します。

クランピングは基本的にバトルダンスのため、相手に攻撃的な感情をむき出しにしながら踊ることが特徴です。さらにブレイクダンスのようにアクロバティックな技を使う場面もあります。

両者の違いについては、クランピングはお互いの感情をぶつけあうダンスに対して、ブレイクダンスは技を競い合うダンスです。1992年に生まれたので、ストリートダンスの中で一番歴史が浅く、比較的新しいダンスの1つともいえます。

クランピングのハンドサインとは?

クランピングのダンサーは特定のハンドサインで、伝えたいメッセージをアピールしています。たとえば、団体のロゴや挨拶代わりに手を使ってアルファベットの形にするので、クランピングにおけるハンドサインは自分を誇示する表現です。

もともとはギャングカルチャーの中で行われたことでクランピングでも取り入れるようになり、ダンサーが所属するグループ独特のハンドサインも存在します。最近では、ダンサーのキャラクター誇示と一緒に、ファッションのアイコンとして写真撮影で使用されることも。

こちらの写真でも手の形をよく見るとアルファベットの「K」を表現しています。単純に「KRUMP(クランプ)」の頭文字を取ったものです。

ダンスバトルの際にも、仲間同士でハンドサインを行い、尊敬や同調の意味を表すコミュニケーションの手段としてアピールしています。

クランピングの歴史

クランピングが世界中に知られるようになったきっかけは、ドキュメンタリー映画「RIZE」です。銃を持つ代わりに、クランピングを武器に厳しい社会を生き抜く若者と、情勢不安定なサウスセントラルの社会問題を描いています。

日本でも2006年に公開されており、多くの若者たちが影響を受け、国内でもクランピングが広まるきっかけに。クランピングを踊るダンサーを「クランパー」と呼び、クランピングのチームは「Famiry」から「FAM」と呼ばれています。

つまり、彼らは通常のダンスチーム以上に、仲間同士の絆を大切にする家族のような存在です。最近では、日本でも「Twiggz Fam(ツイッグス ファム)」と呼ばれる日本最高峰のクランピング集団を始め、ダンス大会でも多くのクランパーたちが出場しています。

クランピングは単に感情のぶつけ合いではなく、明確な意思を持っているダンスです。攻撃的なダンススタイルとは裏腹に、「KRUMP」の最後の文字「Praise(神への賞賛)」が重要視されています。

具体的には、自分を解放しながら精神を高めることも重要な要素として考えられており、ダンスを踊ることで自身を律することが目的です。サウスセントラルのスラム街でも廃れることなく、清く正しい道を歩んでいくための意味があります。

実力のあるクランパーは、クランピングの意味を知っているからこそ暴力を好みません。

クランピングが生まれた当時のサウスセントラルでは、当たり前のように若者たちが犯罪やドラッグに溺れていました。そのなかで彼らにダンスを与えた人物が「トミー・ザ・クラウン」です。

彼もかつてはドラッグに手を染めていましたが、出所後に過酷な環境で生きる若者たちに、ダンスで喜ばせようとピエロの格好でヒップホップをベースとしたクラウンダンスを披露しました。

このクラウンダンスは怒りや欲求不満を暴力ではなく、ダンスで表現することで発散する目的があり、それを見た若者たちが真似を始めたことから現在のクランピングに繋がります。

そして、トミー・ザ・クラウンの弟子「Tight Eyez(タイト アイズ)」を始め、「Mijo(ミホ)」や「Lil C(リル シー)」、「Miss Prissy(ミス プリッシー)」たちが「楽しませるための踊り」であるクラウンから、「戦うための踊り」のクランピングに進化させていきました。

仲間同士で集まっては、ひたすらセッションを繰り広げ、クランピングを楽しむことが彼らの遊びであり、生活の一部です。

近年のクランピングは、非常に早いペースで進化を続け、ポップやロック、ブレイ、アニメーションなど、様々な要素を取り入れたスタイルが流行しています。魅せ方やストーリーを表現することも楽しみ方の1つです。

クランピングの種類

クランピングはストリートダンスの中でも、特に激しく挑発的なダンスなので、「ストンプ(足を踏み鳴らす)」「チェストポップ(胸を突き出す)」「アームスイング(腕を振り下ろす)」といった激しい動きをベースとしています。

そもそもクランピングは内に秘めている感情を表現するダンスなので、全身を大きく使う攻撃的でパワフルな動きが特徴です。しかし、攻撃的なダンスのイメージから芸術的なダンスとして確立されているため、究極の自己表現と様々なジャンルを組み合わせたスタイルに変化しています。

クランピングの音楽は、遅いテンポで8ビートを取りながら、連打音が入る重たい感覚が強い曲です。ヒップホップと同じように、重たいブラックミュージックが使用されることもあります。

次はストンプ・チェストポップ・アームスイングをそれぞれ動画で紹介します。

ストンプ

ストンプは、地面を踏み鳴らす動作なので、基本的動作のなかで比較的簡単です。

わかりにくい人は、地面に置いてある空き缶を上から踏みつぶすようなイメージをするといいでしょう。

こちらのストンプは、もともとジャズダンスで使われていたリズムで、激しく足を踏み鳴らしたり、手を叩いたりしていました。

20世紀前半になると、ジャズダンスと同時に表現方法の1つとしてストンプもストリートダンスに組み込まれいくことになります。

アメリカ・マンハッタンにある小さな劇場のオフブロードウェイでは、1994年に「ストンプ」という名のパフォーマンスショーが行われ、鍋やデッキブラシ、ドラム缶を楽器としてリズムを演奏していました。

こういったパフォーマンスショーもストンプの発展型ともいえます。

チェストポップ

チェストポップの「チェスト」は胸、「ポップ」は弾くという意味のとおり、「胸を弾くように突き出す」動作になります。

クランピングにおいてチェストポップは重要な要素です。チェストポップは胸で爆発するような動作で、体中のエネルギーを外に突き出すイメージです。

チェストポップは、3つのレベル段階があります。レベル1のチェストポップは、1・2・3のリズムで徐々に胸を前に突き出し、また同じように戻していく動作です。

レベル2では力強く胸を打ち出すヘビーヒット、レベル3では爆発するようなチェストポップの後に全身を使ってサイドやフロントに移動します。チェストポップでは呼吸がポイントです。

呼吸するときは腹式呼吸で空気を大量に吸い込み、胸を膨らませます。もし、後ろにバックダウンするなら、背中を後ろに打ち出すイメージです。

チェストポップはパワフルに行うことで、かっこよさが決まります。習得するまで練習が必要なので、レベル1の段階からパワフルさを意識しましょう。 

アームスイング

アームスイングは意味のとおり、「腕を振り下ろす」動作です。手に物を持って投げるイメージになります。

クランピングにおけるアームスイングは非常にパワフルで、一曲を踊りきるだけで身体への疲労が凄まじい動きです。アームスイングは他のテクニックのなかで一番体力が削られるため、筋力と持久力が必要になります。

しかし、クランピングには力強い表現が必要とされており、それだけ重要な動作です。クランピングでは力強さがあればあるほど、圧倒的な魅力が表現できます。

いかに内側のエネルギーを外に放出できるかどうかで、クランピングの質が左右されるので、基礎の筋力トレーニングは欠かせません。

日本におけるクランピング

世界中にクランピングが知られるきっかけとなったドキュメンタリー映画「RIZE」の影響で、日本でも一時期ブームになりました。日本ではJUN(佐藤 順一郎)が有名で、数々のアーティストとコラボするダンサーの1人です。

また、ダンサーネームではTwiggz(ツイッグス)、KiLLiK(キリーク)、Young Style Ripper(ヤングスタイルリッパー)として知られています。日本のクランパーとして活動する彼は、クランピングの技術や文化の奥深さを追求するためにアメリカ・ロサンゼルへ渡米・在住後に日本と海外との架け橋として活躍。「Twiggz Fam」を立ち上げ、バトルイベントの開催も行うクランピングの先駆者です。

「Twiggz Fam」では多くの有名アーティストを輩出しており、今や日本のトップアーティストとして活動する「EXILE」「三代目 J Soul Brothers」「GENERATIONS」のメンバーである⼩林直⼰、岩⽥剛典、佐野玲於、関⼝メンディーも「Twiggz Fam」出⾝です。

彼らも現役のクランパーとして活躍しているので、ダンスの手本として研究してみるといいでしょう。

まとめ

本記事ではクランピングについて歴史から種類まで紹介しましたが、テクニックを見せあうストリートダンスとは異なり、戦うためのダンスであることを覚えておきましょう。

バトルダンスとして発展したクランピングは、かつては社会的情勢が不安定だったアメリカ・サウスセントラルで生まれました。やり場のないストレスを犯罪や暴力ではなく、クランピングで発散させるように広めたトミー・ザ・クラウンは偉大なダンサーです。

また、クランピングにおいて、ストンプ・チェストポップ・アームスイングは基本的動作ですが、重要な要素でもあります。力強さがあればあるほど、クランピングがより魅力的に。

日本でも15年前に公開された映画「RIZE」で影響されたクランパーが多く、トップアーティストとして活躍しています。クランピングは初心者からでも出来るダンスで、もちろん練習は必要ですが、身体の中からパワーを放出する感覚はクランパーにしかわからない自己表現です。

もし、クランピングに興味がある人は動画を見ながら踊ってみましょう。

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