タヒチアンダンスとフラダンスの違いとは?タヒチアンダンスの特徴も紹介

タヒチアンダンスとは?

タヒチアンダンスは、その名のとおりリゾート地として人気のタヒチを始めとするポリネシア諸島に伝わる民族舞踊です。ハワイのフラダンスの発祥とも言われており、女性ならではのボディラインを活かしたダンスと華やかな衣装が特徴的です。

タヒチアンダンスは現地のタヒチ語では「オリ・タヒチ」と呼ばれており、私たち人間が言葉を使ってコミュニケーションを取るようにダンスで想いを伝えることを意味します。

タヒチのリゾートホテルで行われているショーのエンターテインメントとしても人気で、タヒチの文化を象徴するダンスです。タヒチアンダンスは過去から現在まで現地で暮らす人々にとっては、ダンスなしでは生活が考えられないくらい重要なものです。

かつてのタヒチでは文字を持たずに、タヒチアンダンスの原形ができるまで文字を使ったコミュニケーションがありませんでした。文字の代わりに歌と踊りで文化を伝承してきました。

タヒチアンダンスは豊穣や勝利の神への信仰を示すほかに、人生の節目を祝う場面や遠くから来た人を歓迎するときに踊られていました。

後にタヒチを出た人々がハワイで伝えられるようになってから、現在のフラダンスまで発展することになります。しかし、19世紀になるとタヒチは当時のフランスが統治するようになったことで、現地の人々からダンスを奪いました。

そういった悲しい歴史のなかでも、隠れながら踊り続けたことで現在まで文化を守ってきた経緯があります。現在では、私たちが住む日本でもタヒチアンダンスの祭典が行われるようになるくらい世界中に広まっています。

タヒチアンダンスとフラダンスとの違いは?

タヒチアンダンスはフラダンスとの違いについて曖昧なイメージがある人も多いでしょう。先述したとおり、フラダンスの原型がタヒチアンダンスですが、細かいところに目を向けると違いがはっきりすると思います。

かつてのフラダンスは若い女性だけが踊るものというルールが存在していたようです。たとえば、家族や部族間で争いがあったときに和解する役割や、勇敢に物事を成し遂げた人を称賛するときに踊られるといった重要な意味を持ちました。

タヒチアンダンスはフラダンスと比較すると、激しいテンポで伝統的な打楽器に合わせて踊ります。その一方で、フラダンスではタパと呼ばれる植物の繊維で作られた衣装で優雅に踊ります。

フラダンスは「ハンドモーション」と呼ばれる動作を中心ですが、タヒチアンダンスでは腰の動きがメインです。タヒチアンダンスのテーマによって、ダンサーたちが身にまとう衣装の雰囲気は異なります。

こういった細かな違いを少しでも知っていると、よりタヒチアンダンスの魅力に触れることができるでしょう。

タヒチアンダンスの種類と特徴

伝統的な踊りであるタヒチアンダンスには、以下の4つの種類があります。

  • アパリマ
  • オテア
  • パオア
  • ヒヴィナウ

それぞれ詳しく紹介していきます。

アパリマ

アパリマの「アパ」は動き、「リマ」は手の意味を持ちます。ウクレレやギターのメロディーに合わせて、手話のような動きで歌詞を表現するスタイルです。アパリマでは打楽器だけでなく、歌に合わせて踊ることも特徴の1つです。

また、アパリマのテーマは自然・神話・感情がメインになります。ダンサーたちは花柄が特徴的なロングドレスと花冠を着用しながら踊ります。

もともとアパリマは親が子どもに言葉を教える手段の1つとして重要な役割を担っていました。ただ単に踊るのではなく、見る側に自分の想いを伝えるように幅広い表現力が求められます。

ちなみに、様々な種類があるタヒチアンダンスのうち、アパリマはポリネシア諸島にまだ文字文化が発展していなかった頃にボディランゲージで語り部が航海の話を伝えたことが始まりとされています。

結果的に現在でも物語を伝えるための手段としてアパリマが見られるようになったわけです。

さらにアパリマには、昔ながらの生活を表現するためにダンサーが座りながら踊る「アパリマ・ヴァヴァ」と歌と楽器の演奏に合わせて手の動きで自然や神話を表現する「アパリマ・ヒメネ」の2種類があります。

こういったことを踏まえて、動画のダンスを見ると面白くなるでしょう。

オテア

オテアはトエレと呼ばれる伝統的な打楽器などによる演奏と一緒に、大胆な振り付けと速いテンポで踊るスタイルです。

オテアでは男女共に踊ることが特徴で、女性は腰、男性は足の動きがメインになります。また、女性ダンサーたちの衣装はアパリマとはまた違う雰囲気で、貝や羽の装飾が特徴のヘッドドレスや、腰の動きを強調するような衣装を着て踊ることで情熱的な想いを表現しています。

一方で、男性ダンサーたちは「マロ」と呼ばれる、日本のふんどしのようなものでたくましさを表現した衣装が特徴です。

オテアは、男女で踊る「オテア・アムイ」、男性だけで踊る「オテア・タネ」、女性だけで踊る「オテア・ヴァヒネ」の3種類のスタイルに細分化されます。

もともとオテアは戦いの際に士気を高めるために踊られていた、いわば軍事的なダンスの意味を持ち、力強い男性的な踊りで歴史や勝利の喜びを表現していたようです。

タヒチアンダンスのなかでもオテアはかなり体力を使うので、最近では体幹トレーニングとして活用されることもあるようです。

パオア

タヒチでは昔からタパと呼ばれる樹皮で作られた布を生産していたことから、パオアはタパを作る模様がジェスチャーになっているとされているスタイルです。ただ、日本では直接見るような機会がほとんどないダンスなので、機会があれば現地で見るといいでしょう。

また、パオアでは男性リーダーを中心に声の掛け合いをしながら手で脚を叩きながら踊る動きが特徴です。ダンサーたちは半円または円状に座り、男女ペアが掛け声をしながら立ち上がって真ん中で短時間のダンスを行います。

見る側にとっては複数で同じ振り付けを披露するのではなく、ペアによって振り付けが異なるという楽しみもあります。特に、パオアでは女性が男性を誘うことでカップルとなり、ヒヴィナウと呼ばれるスタイルの踊りで円状になって祝福するという流れも見ごたえがあると思います。

私たち日本人にとっては、あまり馴染みのないようなダンススタイルですが、視野を広げるという意味でも見る価値のあるダンスでしょう。

ヒヴィナウ

ヒヴィナウは先述したパオアの延長に踊られるスタイルのダンスで、男女に分かれて円を作り、逆方向に回りながら打楽器の演奏に合わせて歌詞のフレーズごとに踊ります。

また、男女ごとの円同士が向き合って一時停止したときに掛け声を行い、次はフォークダンスのようにパートナーを変えながら踊り続けるので、見る側にとっても楽しくなるダンスです。

こちらのヒヴィナウの見どころは、打楽器の演奏に合わせて1人の男性が歌い、合唱団がフレーズを引き継ぐといったところでしょう。

ちなみに「ヒヴィナウ」という名称は、船の錨を巻き上げる役割を担っている船員を意味する英語が由来です。「heave now(錨を上げるぞ)」から訛ったと考えられています。

タヒチの伝統的な祭り「ヘイヴァ」

タヒチでは毎年6月末から7月にかけて開催されるヘイヴァと呼ばれる音楽・ダンス・歌の大きな祭典があります。実は日本でも開催されているほど、大きな祭りです。

こちらのヘイヴァでは植物や貝などの自然素材で作られた衣装の着用が義務付けられている、歴史ある伝統的な祭典です。

そもそも「ヘイヴァ」は祭りの意味を持つタヒチ語です。当時のタヒチ王朝では国民にキリスト教を布教しものの、露出が多いタヒチアンダンスは淫らなダンスとされていたことから公共の場では禁じられていました。

それから60年が経過した後に、タヒチ王朝は統治権をフランスに譲渡したことからフランス共和国の一部となり、芸能規制に関する法律を撤廃したその年の7月にヘイヴァが始まったことから、現在でも続いています。

タヒチアンダンスのステップを紹介

ここまでタヒチアンダンスの特徴や種類について紹介しましたが、具体的にどのようなステップが使われているのでしょうか?

今回は以下のステップを紹介していきます。

  • タイリタマウ
  • アミ
  • バル
  • ファアラプ

タイリタマウ

タヒチアンダンスの基本ステップである「タイリタマウ」は、強く大きく動かす意味を持つ「タイリ」と継続する意味を持つ「タマウ」の単語を組み合わせた振り付けです。

タイリタマウの手順は以下のとおりです。

  1. 足が地面を感じるように立ちながら、かかとを浮かせることなく、両膝を軽く曲げた状態をキープします。
  2. 肘を90度に曲げた状態で三角形を意識しながら両手は腰に付けます。
  3. 背筋を伸ばした状態で左右に軽く屈伸しながら動かします。
  4. 上半身はキープした状態で片方の膝を交互に伸ばしながら、お尻を後ろに突き出します。

タイリタマウのポイントは、肩に力を入れないように姿勢を保ち、目線を下げないように意識することです。

アミ

アミは腰を大きくゆっくり回す動きで、大きな円を描くイメージなので、初心者の人でも取っつきやすいでしょう。

アミの手順は以下のとおりです。

  1. 両膝を曲げた体勢から順番に膝を伸ばします。
  2. 再び膝を曲げた後に腰を横に動かします。

アミのポイントは膝を伸ばすとお尻が大きく動くことです。アミの後に行う「ファラプ」と呼ばれる動きはタイリタマウと同じように円を描きますが、素早く動かすため、円が小さくなることから区別をつけることが求められます。

「アミ」はハワイ語で蝶番の意味を持ちますが、タヒチアンダンスでも使われている動きなので、フラダンスでも応用ができる振り付けです。また、円には終わりのない形を描くことから永遠を表現するときにも使われるステップとしての役割があります。

バル

バルは腰で8の字を描くように動かすステップです。バルの手順は以下のとおりです。

  1. 左右に腰を動かします。
  2. 前後に腰を移動させます。

バルのポイントは、右に腰を動かすときにしっかりと右足に重心を置くことです。逆に左足のかかとに移動するときは緩めてから体重移動を行います。

最初は難しいかもしれませんが、腹筋をメインに使うことで綺麗な動きになるので、身体が覚えるまで練習してみましょう。

ファアラプ

ファアラプはこれまでに紹介したステップを踏まえて、基本的なステップをマスターした後に挑戦することがおすすめです。また、腰を素早く回転させる難易度が高いステップで、まさにタヒチアンダンスにしかない振り付けです。

ファアラプの手順は以下のとおりです。

  1. タイリタマウの基本姿勢を作ります。
  2. 膝を動かした後に腰を左右の体重移動で回します。

ファアラプのポイントは片足が軸になるため、腰だけを使うのではなく、左右の足腰が連動するように動かすことです。また、肩の力を抜いて上半身がぶれないように腹筋を使うことがコツです。

まとめ

本記事では、タヒチアンダンスとフラダンスの違いと特徴について紹介しましたが、全体的にタヒチアンダンスについて網羅できたかと思います。

現在では世界中でタヒチアンダンスが知れ渡っているので、毎年7月に開催されるヘイヴァの存在を知った人はぜひ調べてみてください。

今までよりもタヒチアンダンスの見方が変わる面白さを感じてみましょう。

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