ワッキングは1970年代の音楽に合わせながら、腕をムチのように振り回したり、腕を巻き付けるような動きが特徴のダンスです。もともとは、ゲイダンサーたちがクラシックバレエやジャズダンスを踊っていたため、ターンが使われます。
「ワッキング」という名称は、ダンサーのタイロン・プロクターによって名付けられました。当初は、ステージ上で有名なスターの静止画やミュージカルを真似たポージングで表現していたようです。
次第に腕を巻き付けるようなダンスに変化していき、LGBTクラブでも踊られるようになりました。特に、腕を回転したり、ポージングに重きを置くことが特徴です。
ワッキングが登場する前にパンキングと呼ばれるクラブダンスが流行していましたが、英語の「punk」はゲイの男性を指したため、ネガティブな意味としても使われていたことも。
パンキングのなかで、腕を頭の上で動かすワックという技の言葉から「ワッキング」に変更して現在に至ります。
ワッキングの流行自体はアンダーグラウンドに留まっていましたが、ストリートダンスが爆発的に知られるようになったアメリカのダンス番組「ソウル・トレイン」をきっかけに全米に広まりました。
また、ワッキングで使用されている音楽は、ディスコミュージックという点も特徴の1つです。視覚的にロッキングに似ている点は多いですが、ロッキングはファンクミュージックを使用している点で異なります。
ちなみに、現代ではアニメの登場人物が魔法の武器を呼び出すときの動きに例えられることで有名です。
意外なところで、ワッキングの要素が使用されているので、昔の古くさいダンスではないことは間違いないでしょう。
ワッキングのダンサーは、日本において女性ダンサーが広めたことで女性に多い傾向がありますが、もちろん男性にも人気です。ワッキングに向いている人は、ずばり大人数で動きを合わせて踊ることが好きな人でしょう。
他にも、パーティのような雰囲気で踊りたい人や、クールなポージングに魅力を感じる人も多いようです。
とにかく腕を回すことが多いので、一曲踊るだけでも相当な体力を使います。基本的に団体でフォーメンションを作って踊るので、団結力が問われるダンスです。
パンキングは、貧困層が多く住んでいたアメリカ・ロサンゼルスのゲイたちが自己表現するためのダンスで、当時の社会差別に対抗するために踊っていました。
当時のメインだったDJのあだ名が「パンキング」でしたが、「パンク」自体ネガティブな意味を持っていたため、本来ゲイたちを傷つける言葉をポジティブに変換するように。
ワッキングは感情的なのに対し、パンキングはなめらかで精度を高める方向で進化していきました。
しかし、他のストリートダンスも社会差別を武力ではなく、ダンスで抵抗していたという点では、どのダンスも人種の壁や性別の壁をなくす目的であることが多いようです。
ワッキングは日本でも多く知られています。最近では、日本人ダンサーが世界大会にも出場していることから、ワッキングはかなりレベルが高いダンスともいえます。
主に女性ダンサーが活躍していることから、スクールでワッキングを学ぶダンサーも女性が多い傾向です。
ワッキング自体も当時の有名女優を意識したポージングを取ることから、女性らしいバレエダンサーのようなしなやかさが表現するうえで有利になります。
ワッキングの音楽は、ラテンやサルサ、R&Bなど感情に訴えるような曲が多く、聴いているだけでパワーが伝わってくるでしょう。
ワッキングは、子どものダンスもハイレベルな世界です。特に、日本で大きなダンスイベントで一目置かれていたIBUKIは、優勝した後に世界で活躍している若手ダンサー。
好きを極めると世界進出も夢ではないということでしょう。
ここからはワッキングの技を紹介していきます。
技のほとんどが腕を使った動作なので、ワッキングを知らない人でも真似をすれば誰にでも可能です。
あまり聞きなれないジャンルかも知れませんが、知っておくだけでも視野が広くなるので、覚えるだけでも無駄ではありません。
今回は、腕技を3種類、ウォーク、フォーコーナー、コンビネーションという流れで紹介していきます。
1つ目の腕技は、肩の上で腕を高速で前後させる動きです。
どの腕技にも、特に名称がないので、ここでは腕を伸ばして曲げるを繰り返す動きとして紹介します。
こちらの技のポイントは、以下のとおりです。
上記のポイントを意識しながら、顔の前後に腕を持っていきます。最初は、身体の使い方を知らずにすると肩が片方に落ちてしまったり、ひじも動かしてしまうパターンが多いので、ひじを軸にするイメージで動かしましょう。
よく手のひらを外側に向ける意識まで出来ていないこともあるので、指先まで意識を向けることがコツです。
また、腕を激しく前後することから、身体全体がグラグラしてしまう人もいるので、お腹に力を入れると上手くいきます。
さらに手のつま先は、首下まで下げると綺麗な技の完成です。顔の半分までしか下せてないことがあるので、顔の横でひじを中心に三角形を作るようにしましょう。
2つ目の腕技は、伸ばした状態でいろんな方向に振る動きです。
シンプルに振るだけなので、難易度が低めの技になります。こちらの技の特徴は、腕をムチのように動かすことです。
このムチのような動きですが、ダラダラと動かしているともちろん、綺麗には見えません。腕にも力を入れるようにすることでしなやかさを表現します。
ムチのような動作を行うときのポイントは、以下のとおりです。
技は簡単ですが、意識すべきポイントは重要です。たとえば、腰を回して右足を出すときは、右腕ではなく、左腕を動かします。
音楽のリズムは、身体のなかでビートを刻みながら、足の動きに合わせていきます。
一言でいえば、身体の軸を保ちながら、部位だけ動かす技です。
3つ目の技は、腕を回転させる動きです。ワッキングでは有名な技になります。
こちらの技は、腕を時計の針のように回転させていきますが、反時計回りで回していきます。もちろん、ひじまで動かすとおかしくなるので気を付けなければならないところです。
腕を回転させるときに意識しておきたいポイントは、以下のとおりです。
また、頭の後ろまで腕を回転させるときには、ひじを開くことがポイントです。逆に、ひじを閉じながら回転させるときは、肩あたりで一回転させてから頭の後ろに持っていきます。
さらに、両腕を回転させながら大きな円を描くこともあります。右、左、右の順番に腕を回転することを意識しておきましょう。
ウォークでは、ダラダラ歩いていかないように、自分に自信を持って堂々と歩くイメージの技です。
自分の目の前に白線が1本あることを思い浮かべながら、歩いていきます。一見、簡単そうに見えても歩き方で苦労してしまう人も多いようです。
数歩、歩いたら顔を残しながら後ろを振り返って戻ります。少しでも気を抜くと、形が崩れてしまうので、気をつけましょう。
普段の歩きとは別物なので、かっこよく歩くイメージで練習するとやりやすくなります。
フォーコーナーは、ワッキングをはじめ、パンキングやソウルダンスでも使用されている技です。フォーコーナーは名前のとおり、4つの角の意味を持つので、前後左右に身体を向けて足のステップを踏みます。
つまり、フォーコーナーはいろんなダンスのジャンルでも目にすることがあるので、流れを覚えて生きましょう。
フォーコーナーを実際に行うときのポイントは、体重も一緒に持っていかないことです。足だけを出すようなイメージをしてもらえばいいでしょう。
上半身の位置を保ちながら、地面に足を滑らしながら出していきます。方向転換を行うときは、腰を回しながら向きを変えます。
このときの足は地面につけた状態で、足の裏で身体ごと回すようなイメージです。
最後に、コンビネーションという技を紹介します。こちらは、腕・リズム・ポージングの要素をすべて取り入れた技です。
その名のとおり、いろんな要素を組み合わせて出来るコンビネーション。今までの総復習のようなイメージです。
コンビネーションの順番は、以下のとおりです。
かなり細かく、素早いのでカウントを取りながら慣れるといいでしょう。
また、1つひとつの動きは止めずに、なめらかに次の動きに移していくことがコツです。
総まとめしたような技なので、少し難易度が高いですが、基本の技をしっかり習得していればできるようになります。
プロが参加するダンス大会でワッキングを見てみましょう。
腕をムチのように動かしながら回転したり、女性らしいポーズをところどころ決めていたりしています。
しっかり止めるところは止めており、体幹が鍛えられているので、どの技も綺麗に見えます。
身体をしっかり支えているので、腕の激しい動きにも耐えられるくらいの筋力を持っているようですね。
技によってスピード感も異なりますが、上手くアクセントを付けているので、見ていて飽きません。
本記事では、ワッキングについて紹介しました。もともとは、LGBTのダンサーが踊っていたダンスですが、今や世界中で男女問わずに踊られているので、人種の壁や社会差別が当時よりも少なくなっています。
女性らしいポージングやしなやかさが特徴のダンスですが、女性だけでなく、男性にも人気です。あまり聞きなれないダンスだと思っていた人も、意外と既視感のあるダンスなのではないでしょうか。
団体で踊ってみたいという人におすすめのダンスなので、この機会にワッキングのことを知ってみるのもいいですね。